3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
……何という事でしょう。
ルームサービス係の従業員の方はまだ他にも沢山いらっしゃるのに、何故私はこんなにもこの部屋に出向くことになるのでしょうか……。
もはや偶然の域を超えているようにも思え、私は3121号室の扉の前で立ち尽くす。
けど、今回は今までと状況が違い、いつものオーダー品ではなく、しっかりとしたお食事を注文されていた。
なので、私は淡い期待を抱きながら、お料理が冷めない内に早く届けなくてはと、はやる気持ちでインターホーンを鳴らす。
やはり幾ら待っても音沙汰無いのは相変わらずで、もはやマスターカードキーで開ける事に抵抗感が薄れてきた私は、難なく部屋の中へと入る。
状況が違うとは思いつつも、もうこの空間に入る事がトラウマになってきている私は、徐々に早くなる鼓動を抑えながら、恐る恐る部屋の奥へと進む。
しかし、いつものけたたましい女性の喘ぎ声が聞こえて来ず、見るとスーツ姿の東郷様が一人リビングのソファーに座っていらっしゃった。
そして、テーブルに置いてあるノートパソコンの周りには沢山の書類が広がっていて、東郷様は真剣な面持ちでその中の書類を眺めている。
ここに来てようやく東郷グループの御子息様らしいお姿を確認する事が出来、私は何故か感極まって涙が出そうになった。