3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
こうして少しの間、私と楓さんの所だけ穏やかな空気が流れる中、楓さんは再び真剣な面持ちへと変わると、視線を東郷代表の方へと向けた。
「とりあえず話は戻しますけど、俺は自分の立場をよく分かっています。だから、あなたもご自分の立場を十分に理解して頂きたい」
「……何だと?」
まるで挑発するような彼の言い分に、東郷代表の眉が小さく動き、怒りのこもった一言を放つと、鋭い目で睨みを利かせる。
「先程あなたが仰ったように次期の代表は俺です。つまりはこの財閥家を生かすも殺すも俺次第だということをお忘れなく」
けど、楓さんはそんな代表の鋭い視線をものともせず、ほくそ笑みながら脅迫まがいな台詞をさらりと言ってのけ、その言葉に面をくらった代表は驚いた表情で言葉を詰まらせた。
「勿論、ここまで来たなら悪いようにはしません。今後の信頼回復に尽力するのと、それ以上の成果を出すことを約束します。それだけこの家の命運は俺にかかっているという事実を踏まえた上でそれ相応の対応をして頂かないと、後の兄さんの行く末がどうなっているか知りませんよ?」
それからいつの間にやら形勢は逆転し、淡々としながら表情を変えることなく更に脅しをかけていく楓さんの姿を私はその場で呆然と眺める。
これが竜司様や白鳥様が言っていた彼の裏の顔なのだろうか。
私を取り戻すだけではなく、掴んだ弱みは身内だろうが何だろうが、とことんなまでに利用して相手を窮地に立たせる。
その逃げ道を与えさせない完膚なきまでに追い詰めるやり方と闇深さに、最愛の方ではあるけど他人事ながら少しだけ身震いがした。
東郷代表も私と同じ心境なのか。それ以降一言も発することなく黙り込んでしまい、顔付きも段々と弱々しいものへと変わっていく。
「では、用件は全て伝えたので、俺達はこれで失礼します」
一向に東郷代表からの返答がないまま、楓さんはそれを全く気にする事なく話をさっさと切り上げてから席を立ったので、私も慌てて彼の後を追う為にその場を離れる。
「楓」
すると、リビングの扉に手を掛けようとした途端、背後から弱々しく彼の名前を呼ぶ代表の声が聞こえ、楓さんは黙って後ろを振り返る。
「これからも、よろしく頼むぞ」
一体何を言うのかと思いきや。特に謝罪の言葉がある訳でもなく、相変わらずの上から目線な物言いに半ば呆れてしまうけど、その一言に深い意味を感じ、私は視線だけを隣に立つ楓さんの方へと向けた。
「……ええ、分かってます」
そして、暫しの沈黙が流れる中、楓さんは僅かに口元を緩ませると、相変わらず感情のこもっていない単調な声でそう返答し、この場を後にしたのだった。
「とりあえず話は戻しますけど、俺は自分の立場をよく分かっています。だから、あなたもご自分の立場を十分に理解して頂きたい」
「……何だと?」
まるで挑発するような彼の言い分に、東郷代表の眉が小さく動き、怒りのこもった一言を放つと、鋭い目で睨みを利かせる。
「先程あなたが仰ったように次期の代表は俺です。つまりはこの財閥家を生かすも殺すも俺次第だということをお忘れなく」
けど、楓さんはそんな代表の鋭い視線をものともせず、ほくそ笑みながら脅迫まがいな台詞をさらりと言ってのけ、その言葉に面をくらった代表は驚いた表情で言葉を詰まらせた。
「勿論、ここまで来たなら悪いようにはしません。今後の信頼回復に尽力するのと、それ以上の成果を出すことを約束します。それだけこの家の命運は俺にかかっているという事実を踏まえた上でそれ相応の対応をして頂かないと、後の兄さんの行く末がどうなっているか知りませんよ?」
それからいつの間にやら形勢は逆転し、淡々としながら表情を変えることなく更に脅しをかけていく楓さんの姿を私はその場で呆然と眺める。
これが竜司様や白鳥様が言っていた彼の裏の顔なのだろうか。
私を取り戻すだけではなく、掴んだ弱みは身内だろうが何だろうが、とことんなまでに利用して相手を窮地に立たせる。
その逃げ道を与えさせない完膚なきまでに追い詰めるやり方と闇深さに、最愛の方ではあるけど他人事ながら少しだけ身震いがした。
東郷代表も私と同じ心境なのか。それ以降一言も発することなく黙り込んでしまい、顔付きも段々と弱々しいものへと変わっていく。
「では、用件は全て伝えたので、俺達はこれで失礼します」
一向に東郷代表からの返答がないまま、楓さんはそれを全く気にする事なく話をさっさと切り上げてから席を立ったので、私も慌てて彼の後を追う為にその場を離れる。
「楓」
すると、リビングの扉に手を掛けようとした途端、背後から弱々しく彼の名前を呼ぶ代表の声が聞こえ、楓さんは黙って後ろを振り返る。
「これからも、よろしく頼むぞ」
一体何を言うのかと思いきや。特に謝罪の言葉がある訳でもなく、相変わらずの上から目線な物言いに半ば呆れてしまうけど、その一言に深い意味を感じ、私は視線だけを隣に立つ楓さんの方へと向けた。
「……ええ、分かってます」
そして、暫しの沈黙が流れる中、楓さんは僅かに口元を緩ませると、相変わらず感情のこもっていない単調な声でそう返答し、この場を後にしたのだった。