3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
「……それからさあ……」

すると、急にソファーから立ち上がり、こちらに歩み寄ってくる東郷様。

突然のことに肩を震わせると、私は訳が分からず内心狼狽えるも、それを表に出さないよう何とか平静を装う。

それから至近距離まで近付いて止まると、東郷様は無機質な表情のまま私を見下ろしてきた。

背格好は丁度瀬名さんと同じくらいだろうか。
足がかなり長く、まるでモデルのような体型に圧倒されてしまう。

そして、更に近くで確認出来た東郷様のお顔は、本当にお人形のように整っていて、目はぱっちり二重と長い睫毛。肌も絹のように羨ましい程滑らかで、とても綺麗。

大きな瞳はよく見ると、珍しい透き通った琥珀色で、鋭い目でじっと見つめられると、まるで獲物を狙う狼のようだった。

私は今までに見た事のないくらいの美しいお顔立ちに、思わず息を飲み込んでしまう。


「あんた、いくつ?」

暫く見惚れていると、不意に投げられた東郷様の質問に、はたと我に帰る。

「……は、はい。今年で二十七になりますが……」

何故年齢を訊かれたのか全く理解出来ない私は、首を傾げながらおずおずと答えた。

それから、再び黙ってこちらを凝視する東郷様の視線に私は恥ずかしさで耐えられなくなり、思わず目を逸らしてしまう。

すると、急に鼻で笑い出した彼の反応に、私の頭の中は益々混乱し始めた。

「その歳でまだ処女なの?」


………………はい?

一体何を言われるのかと思いきや、全くの予想だにしていなかった質問に、私は大きく目を見開く。

「俺がしてる間他の奴らは何食わぬ顔で交わしてたのに、あんただけ尋常じゃないくらいの反応だったからさ」

そして、まさかあの時の私の様子をご存知だった事に、驚きを隠す事が出来なかった。

「しかも見た限りだと、あんた男も知らなそうだな」

加えて、思いっきり図星を突かれてしまい、何とか努めていたポーカーフェイスが一気に崩れ出し、私は驚愕した目で東郷様を見上げた。

そんな私の反応に、今度は口元を抑えて笑い始める東郷様。

完全に馬鹿にされている状況に、私は恥ずかさと悔しさで徐々に体が震え出した。
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