3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜

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「天野さん、東郷様のバトラーになったの！？」

御子柴マネージャーから話を聞いたあと、私は上から辞令を頂き、急遽始まったバトラー研修を受けている中、フロントにいた瀬名さんに会うや否や、かなり驚愕した目で見られてしまった。

「……え、ええ。成り行きでそうなってしまいました」

私自身も何故なのか理由が分からないままなので、戸惑いながら首を縦に振る。

「異例の事態だから、周りもその話題で持ち切りだよ。すごい事だと思うけど……でも、天野さん大丈夫？この前の一件からまだ日がそんなに経っていないのに……」

そんな私を気遣うように、瀬名さんの相変わらずの心に染み込むような優しい眼差しを向けられ、胸が締め付けられる。

一先ずあの時の失態でクビにはならなくて済んだけど、これから東郷様と一対一で向き合わなくてはいけない。

おそらく婚約者との営みを何度も見る事になるだろうし、バトラー経験皆無の私はまた粗相をしてしまうかもしれない。

だから、遅かれ早かれ、私がここを去る事になるのは時間の問題なような気がする……。

「……正直自信はないですけど、断れる話でもないですし、やるだけのことはやってみます……」

なんだか死刑宣告をされたような心境になり、それを上手く隠しきれない私は、表情には出さないよう努力するものの、段々と声のトーンが下がっていく。


「天野さん、今度タイミング合った時に二人でご飯でも食べに行かない？」

すると、まさかの思いもよらないお誘いに、取り巻いていた絶望感が一気に消し飛ばされ、私は勢い良く瀬名さんの顔を見上げた。

「え、ええ。是非行きましょう！」

徐々に暴れ始める心臓を抑えながら、何とか取り乱さないように平静を保とうとするも、生まれて初めての男性からのお誘いに、赤くなる頬だけはどうにもならなかった。

とりあえず、しっかりと返事が出来ただけでも上出来だと思う。

「ありがとう。それじゃあ、日程確認したらまた連絡するね」

それから、瀬名さんは心が洗われる程の爽やかな笑顔を振りまくと、そのまま持ち場へと戻っていった。