3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
その時、突如部屋のインターホンが鳴り、私は思わぬ来客に急いで玄関へと小走りで向かう。

ドアを開けてみると、そこにはスーツ姿の白鳥様が立っていて一瞬肝を抜かれた。

「おはようございます。楓様はまだお休み中ですか?」

朝の挨拶でさえも相変わらずの無表情っぷりに、私はたじろきながら首を縦に振る。

すると、白鳥様は無言で部屋の中へ入ると、そのまま楓様が眠る寝室へと足早に向かって行く。

私も慌てて彼女の後を付いていくと、あろうことか。
白鳥様は静かに寝息をたてている楓様の脇で立ち止まると、急に掛け布団をひっぺはがし、寝ている彼にはお構い無しにと、勢い良く枕を取り上げたのだ。

「楓様、もうとっくにお時間が過ぎています。いい加減に起きてください」

そして、終始表情を崩すことなく、悪びれる様子を見せることもなく淡々と話しながら楓様を見下ろす白鳥様のお姿に、私は暫く開いた口が塞がらなかった。

「……くそ。このサイボーグ女、相変わらず容赦ないな」

流石の楓様も目を覚ましたのか。
開口一番に憎まれ口を叩き、眠気まなこで恨めしそうに白鳥様を見上げる。

「いいですか天野様。こういう時この方はちょっとやそっとじゃ起きないので、これくらいしなくてはいけません」

そんな楓様の視線を無視して、白鳥様は平然とした様子で呆然と立ち尽くしたままの私にゆっくりと諭していく。


申し訳ございません。
絶対に無理ですっ!!


なんて、心の中で思いっきりツッコミを入れながら、私は何と返答すればいいのか分からずに、とりあえず苦笑いでその場をやり過ごした。


そうこうしていると、楓様はようやく起き上がり、気怠そうに洗面台へと向かい始めたので、私もリビングに置きっぱなしにしていた朝食を並べるため踵を返すと、白鳥様に呼び止められる。

「私はフロントでお待ちしておりますので、昨日楓様から渡された資料をお持ち下さい。それでは後ほど」

そう告げると、白鳥様は軽く一礼をし、早々にこの部屋から出て行ったのだった。
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