3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
そこから思い出す御子柴マネージャーとの会話。

確か楓様は東郷家の婚外子であるが故に、一族から浮いている存在であると。

そして、楓様自身も東郷家の人間として呼ばれることを酷く嫌っていた。


今のお兄様の反応を見て更に明白になっていく、楓様と東郷家の溝。

私なんてほんの僅かでしか関わっていないのに、それだけでもそこに深い闇があることが分かってしまう程に。


一体楓様は今までどんな人生を迎えてきたのだろうか。

もしあの反応がお兄様だけではないのだとしたら……。

婚外子であるならば、当然被害者である東郷代表の奥様だって楓様を目の敵にしているかもしれない。

当の浮気相手はこの世を去ってしまっているのだから、その矛先は全て楓様に向かっていても可笑しくはない。


仮にそうだとしたら……。


今まで両親の厳しくも愛情たっぷりに育ってきた私には到底想像付くはずもなく、何だかいたたまれない気持ちに涙腺が熱くなっていく。
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