3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
第4話.信頼関係
__数日後。
再び白鳥様から送られてきた楓様のスケジュール連絡。
どうやらまた仕事が佳境に入るらしく、本日から数日間は滞在されるとのこと。
あの日以来、私は楓様としっかり向き合おうと決心したので、更なる気合いを入れて今日という日を迎える。
どうやら本日はお出迎え不要とのことだったので、楓様からの呼び出しが来るまでは、私は違う仕事をしながら待機することになる。
そして、楓様のバトラーに従事している時はほぼ夜勤になるので、瀬名さんとご一緒になる機会が減ってしまうのは非常に残念で心細い。
けど、あまり彼に甘えるのも良くない気がして、私はしっかりせねばと、自分の頬を軽く叩いた。
すると、待ち構えていた楓様専用の呼び出しベルが鳴り響き、私は他の作業を中断すると、急いで彼の元へと向かうため足早にその場から離れる。
それから、3121号室の扉の前に到着すると、再び気合を入れる為に深呼吸をしてから、マスターキーで部屋の中へと入った。
「楓様、どうなさいまし……」
「ああっ!いく、もういっちゃうーっ!!」
……。
…………はい?
何が?どこへ?
中へと足を踏み入れた瞬間、突如聞こえてきた例の女性の甲高い叫び声。
一瞬言っている意味が分からず、その場で思考回路が停止してしまったが、すぐさま後から続いて聞こえてくる女性の激しい喘ぎ声に、私は全身の毛が逆立ってきた。
最近婚約者の連れ込みがなかったので、すっかりこの状況が頭から抜け落ちていた私は、なんの心構えもせずに部屋に入ってしまった事を激しく後悔する。
きっと、このままリビングに行けば、またあの生々しい光景を目の当たりにしてしまうだろう。
しかも、前回と同じぐらいの声量から察するに、これは絶対に近付いてはいけないと本能が警告する。
けど、呼び出された以上この場を離れる事も出来ず、私はリビングから目を逸らし、震えながら耳を塞いだ。
ああ、もう嫌っ!!
瀬名さん。
瀬名さん、助けて下さいっ!!
耳を塞いでも完全に遮断する事が出来ず、女性の喘ぎ声が容赦なく聞こてくる状況に、私は思わず心の中で彼を求めてしまった。
いくら呼んだって既に退勤してしまったので全くの無駄な行為なのは分かっているけど、彼の事を思い浮かべないと気が狂ってしまいそうになり、私は目をきつく閉じながらその場でじっと耐え続けた。