3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
◇◇◇



それからベットメイキング作業が終了したタイミングで、私はアロマとお花を取り替えるために再び楓様のお部屋へと向かう。

そして扉の前に到着してから、私は部屋に入らず刻印されている部屋番号をじっと見つめた。

何だか3121が“最低”と読めてしまう。

それは楓様が?それとも自分の振る舞いが?それともこの現状が?

全てひっくるめて、今までの出来事がこの数字と結び付いているような気がして、私は複雑な心境になる。


そんな余計な考えを払拭した後、誰もいない客室へと足を踏み入れる。

主人がいない為、私はいけないと思いつつも改めて部屋の様子をまじまじと見渡してしまった。

暫く滞在するので、所々楓様の私物が置きっぱなしになっている状態。
それでも基本的な物以外は殆どなく、この部屋はいつ訪れても清潔に保たれていた。

きっと、楓様のご自宅もこんな感じなのだろうか……。


そして、リビングの中で一際存在感を示す、広い大きなソファーと長い大理石のテーブール。

楓様は書斎ではなく、良くここを作業場として活用しているのと、婚約者の方との営みをする場所でもある。

あまり見ているとあの生々しい光景が再び蘇ってきてしまうので、私は視線を逸らしながら避けて通ると、窓際に飾られているお花を取り替える作業を始めた。


「天野君、いる?」

すると、玄関ドアを開けっぱなしにしていた所から突然御子柴マネージャーの声が聞こえ、私は慌てて入り口へと駆け寄る。

「はい、こちらに。いかがなされましたか?」

急にこのタイミングで御子柴マネージャーに呼ばれるなんて、もしかして、私はついにバトラー解任を言い渡されてしまうのでは……。

そう思うと心拍数がどんどん上昇していき、私は冷や汗を垂らしなが恐る恐る尋ねた。

「来月の懇親パーティの体制表、君にも送ったから後で確認してね」

「はい。かしこまりました」

けど予想と反してただの事務連絡だった為、私は密かに胸を撫で下ろし、二つ返事をする。
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