3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
「それでは、これで失礼致します」
上着をお渡しすると、役目を終えた私は楓様に一礼してから部屋を出ようと踵を返した時だった。
「なあ」
突如背後から呼び止められ私は何事かと振り返ると、そこには先程とは一変して、冷めた表情の楓様と視線がかち合う。
「あんたさっき俺にも幸せになる権利があるって言ったな」
何を言われるのかと思いきや、急に先程の話を蒸し返され、私は驚きのあまり目を見開きながら首を縦に振る。
「そんなくだらない話はもう金輪際するな」
それから、心底嫌悪感を示すような顔付きで睨まれてしまい、突然のことに困惑した私は、なんて返答すれば良いのか言葉が見つからず、とりあえず二つ返事をすることしか出来なかったのだった。