3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
__そうして迎えた、翌朝。
「……はあ」
前回同様、七時に朝食をお持ちしたはいいものの、やはり未だベッドで熟睡中の楓様のお姿に思わず大きな溜息が漏れ出す。
このお方は自力で起きる気があるのでしょうか。
アラームの音なんて一切聞こえてこないし……。
それとも、既にセットした時間を大幅に超えていて、目覚まし時計にすら諦められてしまったのでしょうか。
確かに、ここ最近ずっと働き詰めでしたので、きっと疲れもピークに達しているのでしょうけど……。
私は遠い目をしながら、仰向けで気持ちよさそうに寝息を立てている楓様の綺麗な寝顔を見ながら、二度目の溜息を吐く。
とりあえず、気持ち的にはもう少しお休みになって頂きたいところだけど、起こせと言われている以上その役目を果たさねば!
こうして使命感に燃えた私は、楓様を起こすために体を揺らし始める。
「楓様、朝です。起きてください」
それなりに声を張り上げているのに、全くビクともしないご様子。
「白鳥様に叱られてしまいますよ。早く起きてください!」
今度はもう少し声のボリュームを上げて、強めに体をゆすってみるけど、状況は何も変わらない。
「楓様、お時間はとっくに過ぎています!遅れてしまいますよ!?」
それならばと、お腹の底から声を張り上げ、遠慮なしに何度も何度も楓様の体を左右に強く揺らす。
「……うーん……」
すると、ようやく反応を示したかと思ば、目も開かず寝返りをうって再び夢の中へと堕ち始めていこうとする楓様に、私は我慢の限界を迎えた。
「もう起きて下さいっ!せっかくの朝食が冷めてしまいますよっ!!」
まるで母親にでもなったような気分になりながら、私は楓様の耳元で最大限の大声を出すと、思わず掛け布団を剥ぎ取ってしまった。
「……うるさい……。サイボーグ女の真似は止めろって言っただろうが」
そうして、ようやくうっすらと目を開いた楓様はとても不服そうな表情で、起きて早々に不平を漏らしてくる。
その言葉にハッと我に返る私。
「あ……申し訳ございません。あまりにも楓様が起きなさ過ぎて、つい……」
自分には到底真似できないと思っていたのに、気付けば白鳥様と同じ行動に出てしまったことに今更ながら驚かされる。
というか、これぐらいやらないと起きないのであれば、白鳥様のあの短時間でのやり方はとても理にかなっているとさえ思ってしまった。