3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
「白鳥様は楓様にとって信頼出来る良きパートナではないのでしょうか。楓様も白鳥様がいらっしゃるからあれ程までにお仕事に集中出来るのでしょうし」

ほんの数回しか関わっていない者が、何て出過ぎたことを申し上げているのだろうと思うけど、お二人の遠慮ないやり取りを見る限りだと間違ってはいない気がして、私はやんわりと微笑みながら自分の考えを伝えた。

「……あの方は昔から我武者羅に働いて、自分の価値を見出そうとしている……」

すると、白鳥様は一呼吸置いてポツリと呟くようにそう告げると、何やら急に口を閉ざしてしまい、重々しい表情で視線を外す。

「……そして、何は東郷グループを自分の支配下に置こうとしているのでしょう。それが、楓様の東郷家に対する復讐とでもいうのでしょうか」

それから程なくして再び語り出した白鳥様の最後の言葉に驚いた私は、目が点になって暫く開いた口が塞がらなかった。

「ふ、復讐ですか……?」

何とか声を絞り出して尋ねてみると、白鳥様は無言で首を縦に振り、私の目をじっと見据えてくる。

「おそらく、あの方は学生の頃からそういう野望を抱いていたのかもしれませんね。それ故に、ここまでのし上がってきた。……まあ、楓様が上に立てば企業成長も期待出来ますし、周囲が何と言おうが、遅かれ早かれあの方に頼らざるを得ない時が来るでしょう」 

その強い眼差しから感じられる、白鳥様の確固たる想い。

多くを語らなくても、その瞳だけで楓様の事を信じていらっしゃるお気持ちがひしひしと伝わって来る。

「だから、不本意な異動ではありましたが、今ではそんな彼のお役に立ちたいと心から思っていますよ」

そして、話の最後で初めて見せてくれた、白鳥様のやんわりとした笑顔。

その表情に魅せられて、私は暫く目が離せなかった。

本当に、普段笑わない方達の見せる笑顔とは、何てこんなにも魅力的なのでしょう。

楓様も白鳥様も。

もっともっとお近付きになりたい。

そう思わせる程に、お二人には何か人を惹きつけるようなものを感じる気がする……。
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