3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
「瀬名さんもその年齢で、もうここのフロント係を任されるなんて流石です。私も見習わなくてはいけませんね」

ホテルの顔と言われるフロント係のお仕事。
しかも、それがVIP専用階となると、職員の中でも相当優秀で経験を積んだ者でなければ配属されない。

その中で唯一二十代の瀬名さんが配属されるのは、このホテル内でも異例の事だった。

でも、同い年なのにとても大人っぽく、身のこなしも洗練されている瀬名さんなら当然の結果なのでしょう。

正に思い描いていた理想の男性像……。

こんな方とお付き合い出来たら、きっと両親もとても喜ぶでしょうね。

なんて、密かに妄想してしまった自分に恥ずかしさを感じながらも、徐々に高鳴ってくる鼓動を抑え、私は気付かれないよう彼を一瞥した。


「俺はルームサービスの仕事も立派だと思うよ。だって一瞬と言えども、一番お客様のプライベート空間に踏み入るし、密接に関わる事もあるから、質の高いサービスが出来る人じゃないと務まらないよ。だから、俺も天野さんを見習いたいかな」

すると、思いもよらぬ瀬名さんからのお褒めの言葉を頂き、私は頬が熱くなり、宙に浮くような気持ちになっていく。

「あ、ありがとうございます。瀬名さんにそう言って頂けるなんて、大変恐縮です!」

そんな自分を見られたくなくて、不自然だと思いつつも、私は彼から思いっきり視線を逸らしてしまった。
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