3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
◇◇◇



___時刻は夕暮れ時。

今日は楓様滞在期間の最終日。

事前に伺っていた白鳥様の話によると、本日で業務の目処が立つようで、明日以降はご自宅に戻るとのこと。

そして、私自身も何日か振りの自宅へと帰れる事になる。

楓様の専属バトラーである為、同じ日数分ホテルに滞在しなければいけない特殊な勤務形態は、合間に休憩時間が挟むもののやはりなかなかに骨が折れる。

とりあえず、ようやく一区切り付く専属バトラー勤務に胸を撫で下ろす反面、次の楓様のご宿泊に見通しが立っていない状況にどこか残念な気持ちが残る。

今まではただ解放感に浸っていたのに、この心境の変わりようには自分でも驚きだった。


すると、突然社内専用の携帯電話が鳴り、私は作業を中断すると、表示画面を確認して慌てて通話ボタンを押す。


「白鳥様お疲れ様です。もしかして、楓様はもう退勤されたのですか?」

いつも楓様をお迎えするために、ご帰宅の際は事前に白鳥様から連絡が入る取り決めになっていた。

だから、白鳥様からの着信が来た時には迎え入れる準備をしなければいけないのだけど、今日はいつもよりもかなり早い時間帯に私は少し焦り始める。

「思いの外順調に業務が進みまして。今退社されたので対応の程よろしくお願いします」

そう端的に要件を伝え終わると、直ぐ様通話は切れてしまった。

宿泊中今までこんな早いお戻りはなかったので、私は携帯をポケットにしまうと、慌ててロビー入り口へと向かう。

つまり、今日はいつもより滞在時間が長いのと、業務も一段落着いたというのであれば、今までの疲れを癒す事が出来る何かおもてなしをして差し上げた方が良いのではないか……。

そう思い、玄関前に着いた私は頭の中であれこれ考えながら楓様のお帰を待つ。
< 93 / 327 >

この作品をシェア

pagetop