3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
「一緒に入るか?」

そして、硬直する私に向けたとんでもない爆弾発言に、私は湯気が出そうな程体の温度が上昇していく。

「なななな何を仰っているのですか!?じょ、冗談はおやめ下さいっ!」

もはや頭の中はパニック状態で、なりふり構っていられない状況につい声を張り上げてしまった。

「俺に尽くすのが嬉しいんだろ?」

「それとこれとは話が違います!そういったサービスは当ホテルでは致しませんっ!」

今度は絡みつくような色気を醸し出す目と甘い声で囁かれ、全身の毛が逆立った私は間髪入れずに思いっきりツッコミを入れる。

完全に揚げ足を取られている状況に、私は尚も熱が引かない頬を膨らませながら楓様を思わず軽く睨み付けてしまった。

「やっぱり、あんたのそのガキみたいな反応はたまに見ると面白いなー」

そんな私の視線なんて全く気に留める様子もなく、楓様は掴んでいた手を離すと、あっさりと身を引いて脱衣場へと戻っていった。


……全く、楓様のその捻くれた性格はなんとかならないものなのでしょうか。

せっかく心からの気持ちをお伝えしたのに、それを良いように遊ばれてしまうなんて。


先程のおもてなし精神はどこへやら。
今ではそんな楓様を恨めしく思いながら、私は不服な面持ちのまま足早に浴室から出る。


「美守」

すると、不意打ちの如く名前で呼びかけられ、私の心臓は再び大きく跳ね上がってしまった。

「夕食は一時間後で」

こちらが返事をするよりも先に要件を仰ると、本格的に服を脱ぎ始めたので、私は慌てて逃げ帰るように脱衣場から飛び出して扉を閉めた。


毎度この自由奔放さに振り回されるといいますか……。

たまに見せる大人の色気が加わわると余計にタチが悪い。

それに、名前で呼ばれることに慣れるのは、まだまだ時間がかかりそうです……。


なんて、扉に背をもたせかけて深い溜息を吐くと、とりあえず次の工程に移るべく、気を取り直すと足早に部屋を後にしたのだった。
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