愛があっても恋がなきゃね
見ると、噂をしていた白髪の彼こと谷江陽凪(たにえひなぎ)がこちらを見ていた。

彼は入学当時から白髪に染めていて、しかも顔も良くてとても目立っていた。

「あっ、ごめんね!?」

愛玖が慌てて席を立った。

白髪くん、前の席なんだ。

けれど、愛玖が席を立ったのにその席に座ろうとしない。

「?」

「俺の席、そこじゃない。そっち。」

「え、」

白髪くんが指を指したのは私の方だった。

「多分席ひとつ間違えてるよ。」

「!?
ごめん!わっ、」

慌てて席を立とうとしたが、椅子の足に足を引っ掛けてしまい、転びそうになる。
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