らんらんたるひとびと。~国内旅編~
 部屋でだらだらシナモンとお喋りして、外に出ることなく一夜を明かした翌朝。
 事件っていうのは、たいてい白雪姫が巻き起こすものであって。
「大変だ、ミュゼ。白雪がさらわれた!」
 朝5時にジェイに叩き起こされて、はああ…とため息をついた。

 女の子大好きな白雪姫は。
 任務先でちょいちょい問題を起こすトラブルメーカー。
「何、また食い逃げ? お金払わなかったの?」
「白雪がナンパした相手っていうのが、この村のリーダー格の男のオンナだそうで。連れ去られてボッコボコにされて柱に吊るされてる」
 冷静にジェイが言うのを、あの野郎と口にする。
 シナモンは「まあ」と悲鳴交じりの声を漏らした。
「返してほしかったら、実力で奪えってさ」
「何それえ。一番厄介じゃん。食い逃げのほうがまだ可愛げあるよ」
 早朝から廊下でぎゃーぎゃー騒いでいたせいか、
 奥の部屋からのそりと、ホムラさんがやって来た。
 やっべえ…とは思ったけど。
 ジェイと顔を見合わせて、白雪姫が連れ去られたことを伝えた。
「……」
 仏頂面、何も言わない。
 私は思わず「ですよねえ」と言ってしまった。
「少しだけ、出発を待ってもらえませんか」
 ジェイが言うと、ホムラさんは無視して部屋へと引っ込んで行った。
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