らんらんたるひとびと。~国内旅編~
目の前にいるのは、まぎれもないドラモンド侯爵で。
「おはよう、鈴」
と、悩殺スマイルで鈴を迎えた。
鈴はその場で「ぎゃー」と叫んでしまった。
久しぶりのドラモンド侯爵の美貌に目をくらましたのだ。
ホムラは鈴を無視して、部屋に入った。
「せっかくの機会だからね。ケリー家にご挨拶をと思ったんだが」
目をおさえながら、まだ鈴は「ぎゃああああ」と叫んでいた。
暫くすると、鈴の父と母が応接間にやって来た。
執事がお茶を用意して、部屋を出て行ったのを見計らって。
ドラモンド侯爵は口を開いた。
「このたびは、わたくしどもの無理なお願いを聴いていただきありがとうございます」
ドラモンド侯爵の言葉によくわからないまま鈴は、侯爵と一緒に頭を下げた。
心臓のバクバクが止まらないが、さっきまでの悲鳴はホムラに「やかましい」と注意されたので、仕方なく口を閉じた。
ソファーにはドラモンド侯爵と鈴が座り、鈴の後ろにホムラが立っている。
向かい側に鈴の父と母が座るという図だ。
父はむすっとした表情でドラモンド侯爵を見つめていた。
「昨日、言っていたことは本当なのですかな?」
父の話の意図が見えず、鈴は首を傾げる。
「ええ。本当です。この旅で確証を得ました」
ふっ…とドラモンド侯爵が口角を上げた。
鈴は今になって気づいたが、ドラモンド侯爵の部下であるゼンの姿が見えないことに気づいた。
ホムラが鈴に仕えるのと同じように、ゼンは四六時中ドラモンド侯爵の側に仕えている。
どこかで待機しているのだろうか。
ゼンの存在が気になって鈴は後ろにいるホムラを見てしまった。
ホムラは無言で顎をくいっと動かして前を向くように注意する。
「本来であれば、私のところで行えばいいことですが…まあ。何事も経験ですからな」
アハハと笑うドラモンド侯爵の言葉に鈴は耐え切れなくなった。
「さっきから、なんの話をされているのです?」
鈴が大声で質問をする。
ドラモンド侯爵と父が、あえて自分を仲間外れにするような会話をするのが気にくわなかった。
任務は無事に遂行出来た。
なのに、まだ何かやることがあるのか?
ドラモンド侯爵と鈴の父が目を合わせた。
父がうんうんと二回、頷いた。
「今回の旅は鈴の経験を積む話だということはわかっているね」
「はい、私がふがいないばかりに…経験を積んで立派な侯爵となるための旅と聴いております」
鈴が言うと。ドラモンド侯爵は整った顔でまっすぐに鈴を見た。
「それは表向きの話で、実際はある人物の正体を暴くための旅だったんだよ」
「ある人物?」
初めて聞く話に鈴は驚いて、すぐに後ろにいるホムラを睨んだ。
ホムラは鈴と目を合わせようとしない。
「スパイを許すわけにはいかない」
ドラモンド侯爵の言葉に鈴は「あっ」と目を見開いた。
「おはよう、鈴」
と、悩殺スマイルで鈴を迎えた。
鈴はその場で「ぎゃー」と叫んでしまった。
久しぶりのドラモンド侯爵の美貌に目をくらましたのだ。
ホムラは鈴を無視して、部屋に入った。
「せっかくの機会だからね。ケリー家にご挨拶をと思ったんだが」
目をおさえながら、まだ鈴は「ぎゃああああ」と叫んでいた。
暫くすると、鈴の父と母が応接間にやって来た。
執事がお茶を用意して、部屋を出て行ったのを見計らって。
ドラモンド侯爵は口を開いた。
「このたびは、わたくしどもの無理なお願いを聴いていただきありがとうございます」
ドラモンド侯爵の言葉によくわからないまま鈴は、侯爵と一緒に頭を下げた。
心臓のバクバクが止まらないが、さっきまでの悲鳴はホムラに「やかましい」と注意されたので、仕方なく口を閉じた。
ソファーにはドラモンド侯爵と鈴が座り、鈴の後ろにホムラが立っている。
向かい側に鈴の父と母が座るという図だ。
父はむすっとした表情でドラモンド侯爵を見つめていた。
「昨日、言っていたことは本当なのですかな?」
父の話の意図が見えず、鈴は首を傾げる。
「ええ。本当です。この旅で確証を得ました」
ふっ…とドラモンド侯爵が口角を上げた。
鈴は今になって気づいたが、ドラモンド侯爵の部下であるゼンの姿が見えないことに気づいた。
ホムラが鈴に仕えるのと同じように、ゼンは四六時中ドラモンド侯爵の側に仕えている。
どこかで待機しているのだろうか。
ゼンの存在が気になって鈴は後ろにいるホムラを見てしまった。
ホムラは無言で顎をくいっと動かして前を向くように注意する。
「本来であれば、私のところで行えばいいことですが…まあ。何事も経験ですからな」
アハハと笑うドラモンド侯爵の言葉に鈴は耐え切れなくなった。
「さっきから、なんの話をされているのです?」
鈴が大声で質問をする。
ドラモンド侯爵と父が、あえて自分を仲間外れにするような会話をするのが気にくわなかった。
任務は無事に遂行出来た。
なのに、まだ何かやることがあるのか?
ドラモンド侯爵と鈴の父が目を合わせた。
父がうんうんと二回、頷いた。
「今回の旅は鈴の経験を積む話だということはわかっているね」
「はい、私がふがいないばかりに…経験を積んで立派な侯爵となるための旅と聴いております」
鈴が言うと。ドラモンド侯爵は整った顔でまっすぐに鈴を見た。
「それは表向きの話で、実際はある人物の正体を暴くための旅だったんだよ」
「ある人物?」
初めて聞く話に鈴は驚いて、すぐに後ろにいるホムラを睨んだ。
ホムラは鈴と目を合わせようとしない。
「スパイを許すわけにはいかない」
ドラモンド侯爵の言葉に鈴は「あっ」と目を見開いた。