らんらんたるひとびと。~国内旅編~
 ミュゼ・キッシンジャーは、他国のスパイである。

 鈴が目を覚ますと。
 あの丸太小屋ではなく、何故か汽車の乗客席に座っていた。
 鈴は状況を飲み込むことができず、絶叫すると。
 駆け付けたホムラが、
「黙らないならば、縛り付けるまでです」
 と縄を持ってきて、鈴を拘束しようとしたので鈴は暴れた。

 すべてが、ドラモンド侯爵によるシナリオ通りの物語にすぎなかった。

 ホムラがミュゼを殺害して3ヵ月が経って。
 ようやく、鈴は状況を飲み込めるようになってきた。
 ただ、1mmも納得はしていない。
 ミュゼを始末するならば、わざわざ一緒に旅をする必要はなかったのではないか。
 本当にミュゼがスパイならば、他国の情報を聞き出してから始末したって遅くはないのではないか。

 何よりも。
 一緒に旅をしたシナモンやジェイ、白雪姫の消息がわかっていない。

 真実を見つけることができないまま。
 鈴は時折、発狂しそうになりながら。
 日々を過ごしていくしかなかった。
 旅が終われば、すぐに爵位を継ぐのかと思っていたが。
 最低、一年は準備がかかる…とドラモンド侯爵に鼻で笑われてしまった。
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