らんらんたるひとびと。~国内旅編~
第二のミッション
「おいらも、一緒に入りたかったよ。久しぶりにミュゼと入りたかったなあ~」
と甘えた声で白雪姫が言ってきたので、ぎろりと睨みつける。
白雪姫は「ひっ」と悲鳴をあげて、ジェイの後ろに隠れた。
早朝起きた出来事は、大浴場で偶然、私と鈴様が鉢合わせをした。とだけジェイと白雪姫に説明した。
もう、色々と面倒臭い…説明するのも嫌だ…
騎士団学校にいる頃、男と間違われていた私は何度かジェイや白雪姫たちに身体を見られる機会は多々あった。時には一緒にお風呂だって入っていた。
だから、一般的な女性と比べたら「あれえ?」というくらい私は身体を見られることに抵抗がない。
というかね、裸見られてギャーギャー騒いでたら、騎士になんかなれるわけないだろうが!!!
…だけど。
怪我をしてからは、身体を見られることは嫌になった。
男だったら、傷は勲章だと言い張れるだろうけど。
体の傷=お嫁にいけないだなんて。
あの頃の…子供の私には理解出来なかった。
「鈴様は赤ちゃんだから、もうどうでもいいけど。ホムラさんに見られたのはキツいなあ」
隣にいたシナモンに愚痴をこぼすと、シナモンは黙り込んでいる。
まあ、コメントのしようがないとは思うけど。
一体、鈴様はどういう教育を受けたら。
あんなふうになるのだろうか。
混浴でギャーギャーいうこともなく。
裸の女性を見ても、平然としているし。
嫌がっている女性の腕をつかむし。
しかも、女性の傷をじろじろ見るなんて…
「まるで、幼子ですわね。鈴様は。見た目は21歳だというのに、世間一般の常識は一切感じられません」
心を読み透かすように、シナモンが呟いたので、身体をびくっと震わせる。
「ごめん、私。口に出してた?」
「いえ…大丈夫ですよ」
とシナモンは微笑む。
我々、一行は。
温泉宿を離れ、森の中を突き進み。
集落にやって来て、一晩を明かした後。
第一の難所と思われる場所へとやって来た。
スラム街でもヘビーだったけど。
ここから先は、精神的にえぐられる難所だ。
登山道の入口を前にして、私とジェイは顔を見合わせた。
振り返って、鈴様を見ると、きょとんとした顔をしている。
後ろに立っているホムラさんは状況を把握しているのか険しい表情をしていた。
「鈴様。確認しておきたいことがあります」
「なんだ?」
いちいち上から目線なのが腹立つが、顔が良いので我慢は出来る。
「ここから先は、登山です。何日か野宿をします。正直、精神えぐられるくらい辛いです。それでも、行きますか?」
昨晩、ジェイと話し合って。
きちんと鈴様と話そうと決めた。
世間知らずで、我儘で愚痴ばかりの坊ちゃんが。
登山を乗り越える覚悟があるかどうか。
ドラモンド侯爵がこの場所を指示しているということは。
鈴様を試しているってことでもある。
ホムラさんは肉体班出身だから、野宿は慣れているだろう。
体力だってある。
鈴様は体力はあるかもしれないけど、野宿は・・・
「私が行かないと言うとでも思ったのか? ドラモンド侯爵の言うことは絶対だ。何があろうとも私はこの旅を遂行しなければならない」
腕を組んで自信に満ち溢れた表情で言う鈴様だが。
こっちは呆れてしまった。
…わかってねえな、コイツ。
「ベッドや布団なんて、ないんですよ。外で寝るんですよ」
「おぬし、私をどこまで馬鹿にすれば気が済む?」
自信満々に答えた鈴様に、「もう、しーらない」という気持ちになった。
「じゃあ、誓ってくださいね。帰りたいとか、もう嫌だって愚痴らないでください」
「男に二言はない。ここに誓おう」
言っていることは、一丁前だというのに。
実際は、愚痴まみれのボンボンだから、嫌なんだよ…
はああ…とため息をつくと。
私はシナモンを見た。
「シナモンも、本当に大丈夫?」
昨日、説明したけれど、シナモンは即答で「ついていきます!」と答えた。
「大丈夫です!」
「あのね、言いにくいんだけど、これから道が険しくなるから、メイド服はやめてほしいのね」
黒いワンピースに白いエプロン。
どう見ても、この先の道のりにはふさわしくない。
「ミュゼ様。申し訳ございません。この服を脱ぐという事は死ぬことと同じなのです」
「……一族の掟ってやつ?」
代々、召使いの家系に生まれたシナモンのことだから。
なんか、そんな予感はしたけど…
よほど困った表情をしたのだろうか。
シナモンが不安げにこっちを見る。
「ですが、ミュゼ様たちの足を引っ張るわけにはいきませんので…」
とシナモンはいきなり走ったかと思うと木の陰に隠れて。
1分もしないうちに、着がえてきた。
さっきまで見たワンピースの裾が腰元まで短くなって(チュニック状態)
黒いスキニーパンツを履いたシナモンが現れた。
「足、ほっそ!」
思わず声に漏らすと、「ミュゼ様のほうが細いですよ」とお世辞を言ってくれるシナモン。
「シナモンちゃんが疲れたら、俺がおぶってやる!」
と白雪姫が豪語したけれど。
皆、心の中で思ったに違いない。
…おまえが一番、体力ないだろう。
と甘えた声で白雪姫が言ってきたので、ぎろりと睨みつける。
白雪姫は「ひっ」と悲鳴をあげて、ジェイの後ろに隠れた。
早朝起きた出来事は、大浴場で偶然、私と鈴様が鉢合わせをした。とだけジェイと白雪姫に説明した。
もう、色々と面倒臭い…説明するのも嫌だ…
騎士団学校にいる頃、男と間違われていた私は何度かジェイや白雪姫たちに身体を見られる機会は多々あった。時には一緒にお風呂だって入っていた。
だから、一般的な女性と比べたら「あれえ?」というくらい私は身体を見られることに抵抗がない。
というかね、裸見られてギャーギャー騒いでたら、騎士になんかなれるわけないだろうが!!!
…だけど。
怪我をしてからは、身体を見られることは嫌になった。
男だったら、傷は勲章だと言い張れるだろうけど。
体の傷=お嫁にいけないだなんて。
あの頃の…子供の私には理解出来なかった。
「鈴様は赤ちゃんだから、もうどうでもいいけど。ホムラさんに見られたのはキツいなあ」
隣にいたシナモンに愚痴をこぼすと、シナモンは黙り込んでいる。
まあ、コメントのしようがないとは思うけど。
一体、鈴様はどういう教育を受けたら。
あんなふうになるのだろうか。
混浴でギャーギャーいうこともなく。
裸の女性を見ても、平然としているし。
嫌がっている女性の腕をつかむし。
しかも、女性の傷をじろじろ見るなんて…
「まるで、幼子ですわね。鈴様は。見た目は21歳だというのに、世間一般の常識は一切感じられません」
心を読み透かすように、シナモンが呟いたので、身体をびくっと震わせる。
「ごめん、私。口に出してた?」
「いえ…大丈夫ですよ」
とシナモンは微笑む。
我々、一行は。
温泉宿を離れ、森の中を突き進み。
集落にやって来て、一晩を明かした後。
第一の難所と思われる場所へとやって来た。
スラム街でもヘビーだったけど。
ここから先は、精神的にえぐられる難所だ。
登山道の入口を前にして、私とジェイは顔を見合わせた。
振り返って、鈴様を見ると、きょとんとした顔をしている。
後ろに立っているホムラさんは状況を把握しているのか険しい表情をしていた。
「鈴様。確認しておきたいことがあります」
「なんだ?」
いちいち上から目線なのが腹立つが、顔が良いので我慢は出来る。
「ここから先は、登山です。何日か野宿をします。正直、精神えぐられるくらい辛いです。それでも、行きますか?」
昨晩、ジェイと話し合って。
きちんと鈴様と話そうと決めた。
世間知らずで、我儘で愚痴ばかりの坊ちゃんが。
登山を乗り越える覚悟があるかどうか。
ドラモンド侯爵がこの場所を指示しているということは。
鈴様を試しているってことでもある。
ホムラさんは肉体班出身だから、野宿は慣れているだろう。
体力だってある。
鈴様は体力はあるかもしれないけど、野宿は・・・
「私が行かないと言うとでも思ったのか? ドラモンド侯爵の言うことは絶対だ。何があろうとも私はこの旅を遂行しなければならない」
腕を組んで自信に満ち溢れた表情で言う鈴様だが。
こっちは呆れてしまった。
…わかってねえな、コイツ。
「ベッドや布団なんて、ないんですよ。外で寝るんですよ」
「おぬし、私をどこまで馬鹿にすれば気が済む?」
自信満々に答えた鈴様に、「もう、しーらない」という気持ちになった。
「じゃあ、誓ってくださいね。帰りたいとか、もう嫌だって愚痴らないでください」
「男に二言はない。ここに誓おう」
言っていることは、一丁前だというのに。
実際は、愚痴まみれのボンボンだから、嫌なんだよ…
はああ…とため息をつくと。
私はシナモンを見た。
「シナモンも、本当に大丈夫?」
昨日、説明したけれど、シナモンは即答で「ついていきます!」と答えた。
「大丈夫です!」
「あのね、言いにくいんだけど、これから道が険しくなるから、メイド服はやめてほしいのね」
黒いワンピースに白いエプロン。
どう見ても、この先の道のりにはふさわしくない。
「ミュゼ様。申し訳ございません。この服を脱ぐという事は死ぬことと同じなのです」
「……一族の掟ってやつ?」
代々、召使いの家系に生まれたシナモンのことだから。
なんか、そんな予感はしたけど…
よほど困った表情をしたのだろうか。
シナモンが不安げにこっちを見る。
「ですが、ミュゼ様たちの足を引っ張るわけにはいきませんので…」
とシナモンはいきなり走ったかと思うと木の陰に隠れて。
1分もしないうちに、着がえてきた。
さっきまで見たワンピースの裾が腰元まで短くなって(チュニック状態)
黒いスキニーパンツを履いたシナモンが現れた。
「足、ほっそ!」
思わず声に漏らすと、「ミュゼ様のほうが細いですよ」とお世辞を言ってくれるシナモン。
「シナモンちゃんが疲れたら、俺がおぶってやる!」
と白雪姫が豪語したけれど。
皆、心の中で思ったに違いない。
…おまえが一番、体力ないだろう。