らんらんたるひとびと。~国内旅編~
 ティルレット王国にイケメンカフェなるものがあるのか…と聴いた時には驚いた。
 店内はお洒落なカフェであることには変わりない。
 木目調のテーブル、椅子。
 観葉植物がいたるところに置いてあって。
 清潔感溢れるお店だと思った。

 店に入ると、店長だという40代のオッサンはジェイを見てニヤニヤしていた。
「いやあ、君のような美男子が国家騎士団なんて信じられないねえ」
 店長は、シルクハットを被り、スーツ姿でステッキを持っていた。
 マジシャンのような身なりだ。
「私は海外を飛び回ってこれだと思ったんですよ。ホストクラブ、キャバクラ。でも、安全に女の子が恋が出来る場所。それがイケメンカフェなんです」
 何を言っているのが、さっぱりわからない。
 店長が海外で、こんな店やあんな店があるんだと説明してくれるが。
 全く、頭に入ってこない。
 シナモンは「なるほど。そういう経営方法なのですね」と頷いている。
 …本当にこの子は聞き上手だ。
 シナモンが真剣に聴いてくれるのに気を良くしたのか。
 店長は終始笑顔だった。
 やがて、店の奥からブスーとした男がやって来た。
 背は低い。
 丸顔に細い目。
 ぱっと見ても冴えない男…。
 年は私たちよりちょっと上か…
「店長、俺は殴られたんですよ。何を語ってるんすか」
「殴られたも何も、おまえの酒癖の悪さが原因だろうが。病院には行ったのか? ん? どうせ、冷やしてれば大丈夫だろ」
 殴られたという右頬は、ちょっとだけ赤くなっている。
 ジェイが本気で殴れば失神して目を覚まさないほどの腕力だから。
 手加減したのがわかった。
(こいつがナンバーワン?)
 要は、イケメンたちを集めて。
 店で働かせるってことだよね?
 で、この目の前にいる冴えない男がナンバーワン…

「まあ、今日だけ頼むよ」
「……俺、騎士だから接客経験ないですけど」
 険しい表情をしているジェイだが。
 店長は明るい。
「大丈夫、君、顔はいいから!」
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