らんらんたるひとびと。~国内旅編~
シナモンって気配ないのかな…。
心臓はまだバクバクしている。
「驚かせてしまって申し訳ありません」
シナモンが謝るので「いや、こっちこそ大声だしてごめん」と謝った。
鈴様が私を置いて、どこかへ行ってしまったと言うと。
シナモンは「まあ!」と目を見開いたけど。
「では、わたくしとホムラ様の3人でお茶でもいかがです?」
とすぐに切りかえて言ったから、思わずずっこけてしまった。
オープンテラスのある店で。
私とシナモン、そしてホムラさんがお茶をしている。
目の前でティーカップを持ってお茶をすすっているホムラさんを見ると不思議だなあと思った。
職場上では、先輩になるお方だけれど。
ドラモンド侯爵側の人間であって。
何を考えているのか全く読み取れない人だ。
きっと悪い人ではないのは、感覚的にはわかるけど。
お互い心を開くのは得策ではないことぐらいわかっている。
「飲んだことのない味だな」
「この町で有名なシトラスティーですって。少し酸味が強いですかね?」
シナモンはくだけた口調でホムラさんに話しかけている。
この子は、本当に人見知りしないし。
こんなに仏頂面のホムラさんに対しても臆することなく話しかけている。
「ミュゼ様、鈴様を攻略できそうですか?」
カップを置いてシナモンが言った。
私は、わかりやすくため息をついた。
「うん、誰が相手しても無理でしょ」
バッサリと言い切ると、ホムラさんが「はあ」と大きくため息をついた。
「ホムラさんも大変だね。あのお坊ちゃまのお世話するの」
思わず同情すると、ホムラさんは死んだ魚のような目をした。
「わたくし、不思議で仕方ないのですが。鈴様はどうして、あそこまで日常生活に疎いのでしょうか」
遠まわしに悪口を言っているシナモンに思わず笑いそうになったが。
ホムラさんのいる手前、笑いを我慢する。
ホムラさんは無…の表情のままだ。
「あの人は一つも悪くない。悪いのは周りの大人だろう…」
ホムラさんはティーカップを持ち上げる。
「嫌じゃないのかな。何の感情もない人と結婚するなんてさ」
政略結婚だなんて、考えるだけでもぞっとする。
ただ、鈴様のことだから。
ドラモンド侯爵の選んだ人なら大賛成だ! と言うに決まっているけど。
人通りはあるものの、
お昼の時間は過ぎてしまっているせいか、カフェにお客さんは私たちしかいない。
シナモンは店員さんにおかわりを注文すると。
私を見た。
「ミュゼ様、昨晩は少々乱暴な行為をしてしまい、申し訳ありませんでした」
ぺこりとシナモンは頭を下げる。
「もし、ミュゼ様が本気で疑似恋愛することに抵抗があるのでしたら、遠慮なくおっしゃってください」
「え・・・嫌も何も、任務でしょ」
疑似恋愛しろだなんて、どういう任務だよ…と最初の頃は憤りを覚えたけど。
深々と頭を下げるシナモンを見ていたら、萎えた。
そもそも、どうしてシナモンが謝るのだろう。
謝ってほしいのは、ドラモンド侯爵とツバキ団長だ。
「私がよくても、鈴様に疑似恋愛をしようという強い意志がない限り、どうしようもない」
もう一度、ため息をつくと。
ホムラさんは苦いものを食べたような表情をした。
「時間をかけて、慣れさせるしか方法はありませんね」
シナモンの言葉に黙って頷く。
シトラスティーはシナモンの言う通り、少し酸味が強くて酸っぱく感じる。
「ミュゼ殿は、鈴様を利用しようと思わないのだな」
心臓はまだバクバクしている。
「驚かせてしまって申し訳ありません」
シナモンが謝るので「いや、こっちこそ大声だしてごめん」と謝った。
鈴様が私を置いて、どこかへ行ってしまったと言うと。
シナモンは「まあ!」と目を見開いたけど。
「では、わたくしとホムラ様の3人でお茶でもいかがです?」
とすぐに切りかえて言ったから、思わずずっこけてしまった。
オープンテラスのある店で。
私とシナモン、そしてホムラさんがお茶をしている。
目の前でティーカップを持ってお茶をすすっているホムラさんを見ると不思議だなあと思った。
職場上では、先輩になるお方だけれど。
ドラモンド侯爵側の人間であって。
何を考えているのか全く読み取れない人だ。
きっと悪い人ではないのは、感覚的にはわかるけど。
お互い心を開くのは得策ではないことぐらいわかっている。
「飲んだことのない味だな」
「この町で有名なシトラスティーですって。少し酸味が強いですかね?」
シナモンはくだけた口調でホムラさんに話しかけている。
この子は、本当に人見知りしないし。
こんなに仏頂面のホムラさんに対しても臆することなく話しかけている。
「ミュゼ様、鈴様を攻略できそうですか?」
カップを置いてシナモンが言った。
私は、わかりやすくため息をついた。
「うん、誰が相手しても無理でしょ」
バッサリと言い切ると、ホムラさんが「はあ」と大きくため息をついた。
「ホムラさんも大変だね。あのお坊ちゃまのお世話するの」
思わず同情すると、ホムラさんは死んだ魚のような目をした。
「わたくし、不思議で仕方ないのですが。鈴様はどうして、あそこまで日常生活に疎いのでしょうか」
遠まわしに悪口を言っているシナモンに思わず笑いそうになったが。
ホムラさんのいる手前、笑いを我慢する。
ホムラさんは無…の表情のままだ。
「あの人は一つも悪くない。悪いのは周りの大人だろう…」
ホムラさんはティーカップを持ち上げる。
「嫌じゃないのかな。何の感情もない人と結婚するなんてさ」
政略結婚だなんて、考えるだけでもぞっとする。
ただ、鈴様のことだから。
ドラモンド侯爵の選んだ人なら大賛成だ! と言うに決まっているけど。
人通りはあるものの、
お昼の時間は過ぎてしまっているせいか、カフェにお客さんは私たちしかいない。
シナモンは店員さんにおかわりを注文すると。
私を見た。
「ミュゼ様、昨晩は少々乱暴な行為をしてしまい、申し訳ありませんでした」
ぺこりとシナモンは頭を下げる。
「もし、ミュゼ様が本気で疑似恋愛することに抵抗があるのでしたら、遠慮なくおっしゃってください」
「え・・・嫌も何も、任務でしょ」
疑似恋愛しろだなんて、どういう任務だよ…と最初の頃は憤りを覚えたけど。
深々と頭を下げるシナモンを見ていたら、萎えた。
そもそも、どうしてシナモンが謝るのだろう。
謝ってほしいのは、ドラモンド侯爵とツバキ団長だ。
「私がよくても、鈴様に疑似恋愛をしようという強い意志がない限り、どうしようもない」
もう一度、ため息をつくと。
ホムラさんは苦いものを食べたような表情をした。
「時間をかけて、慣れさせるしか方法はありませんね」
シナモンの言葉に黙って頷く。
シトラスティーはシナモンの言う通り、少し酸味が強くて酸っぱく感じる。
「ミュゼ殿は、鈴様を利用しようと思わないのだな」