らんらんたるひとびと。~国内旅編~
 高床式の木造の家が連なって。
 家の前では、幼い子供たちが追いかけっこをしてギャーギャー騒いでいる。
 私たちが一歩、足を踏み入れると。
 村の人達は何事かと集まってきた。
「国家騎士団!」
 と、幼い男の子が指をさす。
 その子の母親が「黙りなさい!」と口をおさえる。

 あっという間に、目の前には30人ほどの海の一族が集合して。
 40~50代のオジサン3人ほどが槍を持って敵意むき出しで睨んでいる。
「国家騎士団がなんの用だ!」
 ざわざわと人々が私たちに対して文句を言ってくる。
 国家騎士団は、この国では最上級に偉い職業だって言われているけど。
 海の一族には、物凄く嫌われている。

 百年以上も前。
 海の一族が王家の秘宝を盗んだが故、国家騎士団に海の一族全員が捕らえられた…という歴史がある。
 盗難に関わっていた者だけ処罰されて、あとの人間は解放されたそうだけれど。
 百年以上経った今でも、海の一族は私たち国家騎士団を見ると良い顔をしない。
「俺達は、カハナ様に会いに来た」
 ここぞとばかりに、白雪姫がずいっと前に出て言った。

「我らの姫君に何の用だ」

 敵意は止まらない。
「カハナ様のこいび…いや、カハナ様の運命の人であるジェイという男が来たと伝えてくれ」
 運命の人…という言葉に、一族はざわざわと騒ぐ。
「ほう、久しぶりじゃのう」
 集団の中から一人のおじいさんが出てきた。
 御年、91歳。
 見事な白髪に白い髭。
 背筋をぴんと伸ばしたこのおじいさん。
「村長」
「村長、こいつらが」
「姫君に会いたいと…」
 皆、バラバラにおじいさんに向かって騒ぐ。

 ああ、この段取り面倒臭いなあと黙って見ている。

「ジェイが来たというのは本当か?」

 大声で、聞き覚えのある声がすると。
 目の前で集団になっていた海の一族が左右に分かれて、一本の道が出来上がった。
 長い髪を振り乱して。
 全速力でこちらに走って来たかと思うと。
 カハナは、ぴょんと跳ねて、ジェイに抱き着いた。

 間近で見ていた私はげんなりして。
 シナモンは「まあ!」と声をあげる。
 鈴様は、相変わらず状況を把握しておらず無表情。
 ホムラさんは、目をぱちくりとさせて。
「子供…?」
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