らんらんたるひとびと。～国内旅編～

　子供…と呟いたホムラさんに。
　偏見を持たれたらどうしよう…と考える。

　腰ほどまでに伸びた髪の毛は、普段は黒く見えるけど、光が当たると、紫のような藍色のような色に見える。
　サラサラストレートの髪に、褐色の肌。
　周りの人達は白…クリーム色っぽい民族衣装だけれど。
　彼女だけは全身真っ黒の服を着ている。
　ぎょろりと彼女が大きな目でジェイを見て、微笑んだ。
　黒色の珍しい瞳は、彼女を巫女だと示す証だという。

　ここまで、ざっと彼女の外観を述べたけど。
　年齢までは言っていなかった。
　ホムラさんの言う通り、彼女は子供。
　12歳だったはず。
　こう言ってしまうと、20歳のジェイが子供に手を出した変態としか思われても仕方ないのではないか…
「２年ぶりではないか、どうしてもっと早く会いにこなかった！」
　カハナの言葉に、村人は安心したのか、ぞろぞろと帰っていく。
　さっきのおじさんが言っていたように、村人にとってカハナは巫女であり、お姫様。
　カハナが許した人間だということを知って安心したのだろう。
　残ったのは村長だけで、ニコニコしながら。
　そこに立っている。

「色々あったんだよ。国家騎士団は忙しいって言っただろ」
「国の為に頑張るジェイは素敵だ。だが、私は寂しかった」
　完全に２人の世界に入り込んでいる…。
　あー、長くなりそうだなあと顔を歪める。

「ちょっとお、カハナちゃん。おいらもいるよー」
　カハナに構ってほしいのか、白雪姫がカハナにちょっかいを出す。
　カハナはジェイにしがみついたまま、怖い顔をした。

「なんだ、この食い逃げ男。いたのか？」

　…一同が、凍り付いた。
　そう、生まれたときから、「姫君」だの「巫女」とあがめられ、可愛がられてきたカハナは、物凄く口が悪いのだ。