らんらんたるひとびと。~国内旅編~
集会所は20人集まっても大丈夫だというのだから。
6人寝るには、充分広いというのに。
最初から、泊まらせる気はなかったのだと悟った。
あの子はやっぱり私を許していない。
ジェイと一緒にいるのが気にくわないのだ。
暗闇に砂で足をとられながら。
私と鈴様は、黙ってカハナが指定した家を目指していた。
「これ、家?」
村はずれにある家は。
家を通り越して、どう見ても小屋にしか見えなかった。
鍵で開けようとしたけど。
引き戸がわずかに開いている。
嫌な予感を匂わせながらも、がらがらと音をたてて引き戸を開けると。
月の光がもろに部屋を照らしていた。
天井を見ると、至る所に穴が開いている。
「小屋じゃんっ」
思わず鍵を床にたたきつける。
どこが一軒家だというのだ。
風通しのよすぎる、朽ち果てた廃墟ではないか。
「海の一族にとって、こんなボロ小屋を家というのか…」
何故か鈴様は納得しながら土足で中へ入り込む。
目に入ったのは囲炉裏だった。
あとは、木箱がゴロゴロと積み重なって置いてある。
「ほう、囲炉裏か。懐かしい」
鈴様はすぐさま囲炉裏に近寄って、火を起こそうとしている。
私は、ぼんやりと鈴様を眺める。
カハナの態度にイラッとせいもあって、少し飲みすぎたか…。
頭がぼーとするけど、鈴様だって結構な量を飲んでいるはず。
小屋の中心部には、砂のような灰のようなものがあって。
その砂の周りをレンガが囲っている。
砂の上にあるのは、木炭だろうか。
そういや、2年前に来たときは囲炉裏を初めて見たはずなのに。
使い方をなんとなく、わかってた。
昔、本で読んだんだっけか?
沢山、勉強したのに覚えていることは一握りしかない。
「昔、祖母とこの村に来たことがあってな。祖母が私を海に放り投げたのだ」
「はい?」
いきなり、鈴様が語りだすので驚く。
お互い、暗黙の了解で身の上話はあまりしないようにしていたというのに…
「祖母…おばあさまが鈴様を放り投げる? 虐待じゃないですか」
ふらふらしながら囲炉裏の前にしゃがみ込む。
慣れた手つきで鈴様は、木炭に火をつけた。
「虐待ではない。海の一族は、生まれたて一年後に子供を海に放り投げるという風習があるらしい。私は、2歳だか3歳だったから、遅かったほうだと思う」
「…なんちゅう風習ですか、こわっ」
思わず言ってしまうが。
海の一族には、一族なりのルールがあって。
それを変というのは、おかしいのかもしれない。
「私も、ドラモンド侯爵にその話をしたら驚かれた」
「まあ、普通はそうでしょうね」
じんわりと身体が暖まっていくような気がする。
向かい合って、私と鈴様が座った状態。
「それで、鈴様は海に放り出されてトラウマになったとか?」
「むっ。私はそこまで運動神経は悪くない。ちゃんと泳いだ」
眉間に皺を寄せた鈴様が視界に入る。
夜で良かった。
顔を見た瞬間に、心臓がバクバクするのを感じた。
「…海の一族が生まれてすぐに泳げるっていう伝説は本当なんですね」
海に放り投げられて泳げるって。
本当かよと突っ込みたいけど。
鈴様なら、本当にやってのけそうだからな。
「ずぶ濡れになった私を『よくやった』と祖母は抱きしめてくれて。囲炉裏のある小屋に連れていってくれた」
嬉しそうに話す鈴様を可愛いと思ってしまう。
6人寝るには、充分広いというのに。
最初から、泊まらせる気はなかったのだと悟った。
あの子はやっぱり私を許していない。
ジェイと一緒にいるのが気にくわないのだ。
暗闇に砂で足をとられながら。
私と鈴様は、黙ってカハナが指定した家を目指していた。
「これ、家?」
村はずれにある家は。
家を通り越して、どう見ても小屋にしか見えなかった。
鍵で開けようとしたけど。
引き戸がわずかに開いている。
嫌な予感を匂わせながらも、がらがらと音をたてて引き戸を開けると。
月の光がもろに部屋を照らしていた。
天井を見ると、至る所に穴が開いている。
「小屋じゃんっ」
思わず鍵を床にたたきつける。
どこが一軒家だというのだ。
風通しのよすぎる、朽ち果てた廃墟ではないか。
「海の一族にとって、こんなボロ小屋を家というのか…」
何故か鈴様は納得しながら土足で中へ入り込む。
目に入ったのは囲炉裏だった。
あとは、木箱がゴロゴロと積み重なって置いてある。
「ほう、囲炉裏か。懐かしい」
鈴様はすぐさま囲炉裏に近寄って、火を起こそうとしている。
私は、ぼんやりと鈴様を眺める。
カハナの態度にイラッとせいもあって、少し飲みすぎたか…。
頭がぼーとするけど、鈴様だって結構な量を飲んでいるはず。
小屋の中心部には、砂のような灰のようなものがあって。
その砂の周りをレンガが囲っている。
砂の上にあるのは、木炭だろうか。
そういや、2年前に来たときは囲炉裏を初めて見たはずなのに。
使い方をなんとなく、わかってた。
昔、本で読んだんだっけか?
沢山、勉強したのに覚えていることは一握りしかない。
「昔、祖母とこの村に来たことがあってな。祖母が私を海に放り投げたのだ」
「はい?」
いきなり、鈴様が語りだすので驚く。
お互い、暗黙の了解で身の上話はあまりしないようにしていたというのに…
「祖母…おばあさまが鈴様を放り投げる? 虐待じゃないですか」
ふらふらしながら囲炉裏の前にしゃがみ込む。
慣れた手つきで鈴様は、木炭に火をつけた。
「虐待ではない。海の一族は、生まれたて一年後に子供を海に放り投げるという風習があるらしい。私は、2歳だか3歳だったから、遅かったほうだと思う」
「…なんちゅう風習ですか、こわっ」
思わず言ってしまうが。
海の一族には、一族なりのルールがあって。
それを変というのは、おかしいのかもしれない。
「私も、ドラモンド侯爵にその話をしたら驚かれた」
「まあ、普通はそうでしょうね」
じんわりと身体が暖まっていくような気がする。
向かい合って、私と鈴様が座った状態。
「それで、鈴様は海に放り出されてトラウマになったとか?」
「むっ。私はそこまで運動神経は悪くない。ちゃんと泳いだ」
眉間に皺を寄せた鈴様が視界に入る。
夜で良かった。
顔を見た瞬間に、心臓がバクバクするのを感じた。
「…海の一族が生まれてすぐに泳げるっていう伝説は本当なんですね」
海に放り投げられて泳げるって。
本当かよと突っ込みたいけど。
鈴様なら、本当にやってのけそうだからな。
「ずぶ濡れになった私を『よくやった』と祖母は抱きしめてくれて。囲炉裏のある小屋に連れていってくれた」
嬉しそうに話す鈴様を可愛いと思ってしまう。