らんらんたるひとびと。~国内旅編~
なんで、この人に近寄って。
自分から手を繋いでいるんだろう…
しかも、鈴様は私を投げ飛ばしたり不愉快な表情を浮かべていない。
かつて、花嫁選抜大会というふざけた行事で侯爵令嬢を投げ飛ばしたのを見るからに。
女性が苦手なのかと思っていたら、そうでもなさそうだ。
やっぱり、世間知らずなだけかあ…。
見目麗しいわりに、鈴様の手はゴツゴツしていてマメがある。
「そなたに非はないというのに、トビーという男が婚約破棄する理由は何だ?」
「えーとですね鈴様」
意外と食いついてくるんだな…。
「例えば…例えばですよ? 鈴様は今、ヒナタ伯爵令嬢と婚約しています。ですが、王族の姫君が鈴様と結婚したいと言ってきたらどうします?」
鈴様は何言ってんだコイツという目で私を見てきた。
「そんなもの、ドラモンド侯爵の意見に従うだけだ!」
「…いや、なんでそうなるかね!?」
大声を出すと同時に、ふわっと囲炉裏から灰が舞った。
鈴様が棒のようなもので、木炭を動かす。
「鈴様、王族から命令されたら。絶対に断れないでしょうが!!」
「王家の人間が正しいとは限らないだろう。私にとってはドラモンド侯爵が全てだ」
自信満々に答える鈴様に、「あー」とため息がこぼれた。
洗脳されているとしか思えない。
ここまで、酷いとは…。
「まあ、つまり。トビーが私を捨てたのは。私なんかより身分の高い人と結婚することで自身の出世を取ったわけですよ。わかります、出世?」
「それくらいわかる! つまり、ホムラのように、自分自身の身分が低いから身分の高い者に媚を売ったということだろう?」
「…うーん。うーん?」
それって、違うような気がするけど。
ホムラさんは、庶民の出だけれど。
努力一筋で肉体班の上のほうまで這い上がった努力家であって。
媚売ったとは、違う様な…。
だけど、また否定するのも面倒臭いので、頷くことにした。
「それで、そなたは同期の男に心を入れかえたのか?」
「は?」
なんでそうなる?
私は手をはなすとぎゅーと力をこめて鈴様の腕をつかんだ。
「同期ってジェイのことですか、それとも白雪姫?」
「あの娘が言ってただろ。ジェイに振られたと…」
「あのですね、ジェイは同期で仲間です。家族みたいなもんです」
「私にはそういう関係性がよくわからん」
「友達いないんですか?」
思わず酷いことを言ってしまった。
鈴様が黙り込む。
あまり、これ以上は深堀する必要はないだろう。
「私のことはちゃんと話しましたので。今度は鈴様の話でもしてください」
「私か? 私の話は機密情報の塊だぞ。話すとでも、思ったか?」
「はあ? 私の話だって充分、個人情報爆発ですけど」
それにさっき、おばあ様との思い出を語っていたというのに。
ぎゃーすか鈴様と話しているうちに、夜は更けていく。
カハナのおかげで。
私と鈴様は少しだけ、仲良くなれた。
そんな一日だった。
自分から手を繋いでいるんだろう…
しかも、鈴様は私を投げ飛ばしたり不愉快な表情を浮かべていない。
かつて、花嫁選抜大会というふざけた行事で侯爵令嬢を投げ飛ばしたのを見るからに。
女性が苦手なのかと思っていたら、そうでもなさそうだ。
やっぱり、世間知らずなだけかあ…。
見目麗しいわりに、鈴様の手はゴツゴツしていてマメがある。
「そなたに非はないというのに、トビーという男が婚約破棄する理由は何だ?」
「えーとですね鈴様」
意外と食いついてくるんだな…。
「例えば…例えばですよ? 鈴様は今、ヒナタ伯爵令嬢と婚約しています。ですが、王族の姫君が鈴様と結婚したいと言ってきたらどうします?」
鈴様は何言ってんだコイツという目で私を見てきた。
「そんなもの、ドラモンド侯爵の意見に従うだけだ!」
「…いや、なんでそうなるかね!?」
大声を出すと同時に、ふわっと囲炉裏から灰が舞った。
鈴様が棒のようなもので、木炭を動かす。
「鈴様、王族から命令されたら。絶対に断れないでしょうが!!」
「王家の人間が正しいとは限らないだろう。私にとってはドラモンド侯爵が全てだ」
自信満々に答える鈴様に、「あー」とため息がこぼれた。
洗脳されているとしか思えない。
ここまで、酷いとは…。
「まあ、つまり。トビーが私を捨てたのは。私なんかより身分の高い人と結婚することで自身の出世を取ったわけですよ。わかります、出世?」
「それくらいわかる! つまり、ホムラのように、自分自身の身分が低いから身分の高い者に媚を売ったということだろう?」
「…うーん。うーん?」
それって、違うような気がするけど。
ホムラさんは、庶民の出だけれど。
努力一筋で肉体班の上のほうまで這い上がった努力家であって。
媚売ったとは、違う様な…。
だけど、また否定するのも面倒臭いので、頷くことにした。
「それで、そなたは同期の男に心を入れかえたのか?」
「は?」
なんでそうなる?
私は手をはなすとぎゅーと力をこめて鈴様の腕をつかんだ。
「同期ってジェイのことですか、それとも白雪姫?」
「あの娘が言ってただろ。ジェイに振られたと…」
「あのですね、ジェイは同期で仲間です。家族みたいなもんです」
「私にはそういう関係性がよくわからん」
「友達いないんですか?」
思わず酷いことを言ってしまった。
鈴様が黙り込む。
あまり、これ以上は深堀する必要はないだろう。
「私のことはちゃんと話しましたので。今度は鈴様の話でもしてください」
「私か? 私の話は機密情報の塊だぞ。話すとでも、思ったか?」
「はあ? 私の話だって充分、個人情報爆発ですけど」
それにさっき、おばあ様との思い出を語っていたというのに。
ぎゃーすか鈴様と話しているうちに、夜は更けていく。
カハナのおかげで。
私と鈴様は少しだけ、仲良くなれた。
そんな一日だった。