らんらんたるひとびと。~国内旅編~
2年ぶりの再会だから、ジェイととことんベタベタしたいのだろう。
出発は明朝に延期された。
海の方へ行くと、砂浜では鈴様とホムラさんが木刀を持って特訓している。
2人とも素早い身のこなしで動いているのを見て、
…レベルが違うと絶句した。
見ていると絶望してくるので目をそらして。
流木に座って海を眺める。
シナモンが「お隣よろしいでしょうか」と言ってきたので、「どうぞ」と言った。
遠く…はるか遠くまで続く海を眺めていると。
不思議と心が穏やかになる。
「不躾な質問をしますが…」
と前置きをしてシナモンが真剣な顔をするので、何事かと身構える。
「ミュゼ様は、鈴様をどう思われますか?」
「…へ?」
昨日のお酒が残っているせいか。
シナモンの言葉が頭に入ってこなかった。
「わたくしも、ただ侍女としてこの旅に参加しているわけじゃありません。この旅が終われば、ツバキ様に報告しなければなりません」
「ああ、そうだよね」
私は頷いた。
「鈴様は、侯爵になるには足りてないと思う」
「…はっきりとおっしゃるのが、ミュゼ様らしいですね」
クスっとシナモンが上品に笑った。
旅も終盤。
あと数日で、ケリー侯爵家に辿り着く。
そう考えると、一気に寂しい気持ちに襲われた。
それだけ、楽しかったのかもしれない。
怖かったこともあったけど。
思い出が沢山できた。
「鈴様は、ドラモンド侯爵に随分とお熱だから。操り人形として生きていくのなら、侯爵になるには向いていない。あの人は、ムカつくけど心は綺麗だから。周りに悪い奴がいたらすぐに染まってしまう…」
ニコニコしているシナモンを見て、なんか急に恥ずかしくなってきた。
「シナモンこそ、鈴様をどう思う?」
「わたくしは…鈴様どうこうより、ホムラ様が恐ろしいかと」
シナモンが鈴様たちのほうに視線を送った。
人間離れした動きに、恐怖を覚える。
国家騎士団なのだから、武術・剣術・銃術…すべて基礎は習ったけれど。
見るからに、あの速さは異常だ。
隙のない動きは、肉体班の頂点である人間を思い起こさせる。
やがて、鈴様の身体がぐらっと傾いた。
あのスピードで動いていたら、疲れるに決まっている。
だが、ホムラさんは息一つ乱れずに立っているではないか。
「ミュゼ様。この旅が終わっても、たまにはツバキ様の家に遊びに来てくださいね。わたくし、ミュゼ様と仲良くなれたことを心から嬉しく思います」
「どうしたの? 急に湿っぽいこと言って。大丈夫、ツバキ団長は上司だから、嫌でも行く羽目になると思うよ」
アハハと笑い飛ばした。
シナモンは「そうですか?」と安心したような表情を見せる。
…だけど。
心の中で、もう会えないかもなあ…というどんよりとした気持ちはあったのだと思う。
出発は明朝に延期された。
海の方へ行くと、砂浜では鈴様とホムラさんが木刀を持って特訓している。
2人とも素早い身のこなしで動いているのを見て、
…レベルが違うと絶句した。
見ていると絶望してくるので目をそらして。
流木に座って海を眺める。
シナモンが「お隣よろしいでしょうか」と言ってきたので、「どうぞ」と言った。
遠く…はるか遠くまで続く海を眺めていると。
不思議と心が穏やかになる。
「不躾な質問をしますが…」
と前置きをしてシナモンが真剣な顔をするので、何事かと身構える。
「ミュゼ様は、鈴様をどう思われますか?」
「…へ?」
昨日のお酒が残っているせいか。
シナモンの言葉が頭に入ってこなかった。
「わたくしも、ただ侍女としてこの旅に参加しているわけじゃありません。この旅が終われば、ツバキ様に報告しなければなりません」
「ああ、そうだよね」
私は頷いた。
「鈴様は、侯爵になるには足りてないと思う」
「…はっきりとおっしゃるのが、ミュゼ様らしいですね」
クスっとシナモンが上品に笑った。
旅も終盤。
あと数日で、ケリー侯爵家に辿り着く。
そう考えると、一気に寂しい気持ちに襲われた。
それだけ、楽しかったのかもしれない。
怖かったこともあったけど。
思い出が沢山できた。
「鈴様は、ドラモンド侯爵に随分とお熱だから。操り人形として生きていくのなら、侯爵になるには向いていない。あの人は、ムカつくけど心は綺麗だから。周りに悪い奴がいたらすぐに染まってしまう…」
ニコニコしているシナモンを見て、なんか急に恥ずかしくなってきた。
「シナモンこそ、鈴様をどう思う?」
「わたくしは…鈴様どうこうより、ホムラ様が恐ろしいかと」
シナモンが鈴様たちのほうに視線を送った。
人間離れした動きに、恐怖を覚える。
国家騎士団なのだから、武術・剣術・銃術…すべて基礎は習ったけれど。
見るからに、あの速さは異常だ。
隙のない動きは、肉体班の頂点である人間を思い起こさせる。
やがて、鈴様の身体がぐらっと傾いた。
あのスピードで動いていたら、疲れるに決まっている。
だが、ホムラさんは息一つ乱れずに立っているではないか。
「ミュゼ様。この旅が終わっても、たまにはツバキ様の家に遊びに来てくださいね。わたくし、ミュゼ様と仲良くなれたことを心から嬉しく思います」
「どうしたの? 急に湿っぽいこと言って。大丈夫、ツバキ団長は上司だから、嫌でも行く羽目になると思うよ」
アハハと笑い飛ばした。
シナモンは「そうですか?」と安心したような表情を見せる。
…だけど。
心の中で、もう会えないかもなあ…というどんよりとした気持ちはあったのだと思う。