らんらんたるひとびと。~国内旅編~
丸い輪郭に、くりっとした二重の目。
黒っぽい髪は胸元まで伸びていて、一つに結ってある。
光沢のある生地のネグリジェ姿で現れた女性に、鈴はすぐに飛びついて握手をした。
ドラモンド侯爵の養子になってから、一度も両親には会っていなかった。
正直、鈴は母を見て「老けたな」と思った。
10年という月日はあまりにも長かったのかもしれない。
「大きくなって…」
目に涙を浮かべている母を見ていたら、鈴の心がずきんと痛んだ。
これまで、誰が泣いていようが落ち込んでいようが自分には何一つ関係ないと思っていたが(ドラモンド侯爵だけは除く)母が自分を見て泣いているのは、見たくないと思った。
「父上は?」
会ったら、言いたいことが沢山あったはずなのに。
鈴は母上を見て、考えていたことが全て吹っ飛んでしまった。
「お父様はもうお休みになっているわ。明日、貴方に会えると思って早めに就寝したのよ」
ぎゅっと鈴の手を握っていた母上は、ようやく後ろにいるメンバーに気づいた。
「このたびは、鈴と一緒に、旅に同行してくれた方たちですね。ありがとうございます」
身体を90度近く折り曲げて頭を下げる母上に、鈴はどうして頭を下げるのか理解できなかった。
「鈴様、客室の準備が出来ました」
執事が何人かの侍女たちを連れて鈴のもとへやって来た。
「もう遅い時間ですから、ゆっくりと休まれますよう…」
ぺこぺこと頭をさげる鈴の母上を見ながら、皆が客室へと向かっていく。
鈴自身も「じゃあ、母上。おやすみなさい」と言って客室へと向かう。
だが、「鈴!」と大声で母に呼ばれ、鈴は勢いよく振り返った。
「貴方の部屋はそのままにしてあるの。今夜は自分の部屋で休んだらいいわ」
黒っぽい髪は胸元まで伸びていて、一つに結ってある。
光沢のある生地のネグリジェ姿で現れた女性に、鈴はすぐに飛びついて握手をした。
ドラモンド侯爵の養子になってから、一度も両親には会っていなかった。
正直、鈴は母を見て「老けたな」と思った。
10年という月日はあまりにも長かったのかもしれない。
「大きくなって…」
目に涙を浮かべている母を見ていたら、鈴の心がずきんと痛んだ。
これまで、誰が泣いていようが落ち込んでいようが自分には何一つ関係ないと思っていたが(ドラモンド侯爵だけは除く)母が自分を見て泣いているのは、見たくないと思った。
「父上は?」
会ったら、言いたいことが沢山あったはずなのに。
鈴は母上を見て、考えていたことが全て吹っ飛んでしまった。
「お父様はもうお休みになっているわ。明日、貴方に会えると思って早めに就寝したのよ」
ぎゅっと鈴の手を握っていた母上は、ようやく後ろにいるメンバーに気づいた。
「このたびは、鈴と一緒に、旅に同行してくれた方たちですね。ありがとうございます」
身体を90度近く折り曲げて頭を下げる母上に、鈴はどうして頭を下げるのか理解できなかった。
「鈴様、客室の準備が出来ました」
執事が何人かの侍女たちを連れて鈴のもとへやって来た。
「もう遅い時間ですから、ゆっくりと休まれますよう…」
ぺこぺこと頭をさげる鈴の母上を見ながら、皆が客室へと向かっていく。
鈴自身も「じゃあ、母上。おやすみなさい」と言って客室へと向かう。
だが、「鈴!」と大声で母に呼ばれ、鈴は勢いよく振り返った。
「貴方の部屋はそのままにしてあるの。今夜は自分の部屋で休んだらいいわ」