離縁の理由は愛されたいと思ったからです

エミリオの仕事


「フォンターナ卿、本日はお誘いいただき有難うございます」

 動きやすい格好って言われたけれどこんな感じでいいのかな……シンプルなワンピースにブーツと言った格好だ。


「今日はお忍びという事でプライベートだから名前で気軽に呼んでもらえると助かる」


 名前……! そう言えば王宮で名前を知った時に呼んだことがあったわ。あの時はファミリーネームを知らなくて……

「エミリオ様とお呼びしますね」


 う、照れる……男性を名前で呼ぶなんて。フェルナンドは友達だし(元夫)は名前で呼ぶ事は過去数回……。


「い、行こうか」

 ふいっと顔を晒された。あ、そうだスカーフで髪の毛を隠さないと……


「? 何をしているのか聞いて良い?」

 不審に思われたかしら。


「この髪色は目立ってしまうので、エミリオ様が私なんかと出かけた事がバレたら申し訳なくて……鉄道に釣られてきてしまいましたけど、その、エミリオ様には婚約者様とかは……もしかしてご家族が……誤解を招くような事があったらと思って」


 よく考えたら公爵家の嫡男。婚約者がいてもおかしくないし、結婚していてもおかしくないわよね! 私のバカ! 


「あぁ、そういう事? はははっ、それなら問題ありません。せっかくセットしてあるんだからこのスカーフは没収します。余計怪しくて笑ってしまう」

「怪しい……」


「言ったよね? そういう人は居ませんと。婚約者もいない。私はそんな不誠実な男ではありません」


 決まった人がいるのに異性を誘うなんてエミリオ様はしなさそうよね。それに以前聞いていたけど、同一人物とはまだ思えない感覚。


「あ、ほらレールが敷かれています。ここに駅が出来るからこの辺はもっと栄えるでしょうね、そうなるとルーナ嬢の店も繁盛間違いなしだ。良いところを選びましたね」


< 112 / 180 >

この作品をシェア

pagetop