離縁の理由は愛されたいと思ったからです
 駅へと続くメイン通りの一角に店がある。一年前に事業を撤退したお父様の知り合いから借りている。一等地とまでは言わないけれど人通りが多い分良い立地だと思う。


「店舗が広いからついでにカフェもという感じで始めたんです。元々は店舗を持たずに注文を受けていたんですが、限界がきてしまって。それに王太子妃様御用達と言うフレーズは売り上げに大きくつながりました。そのかわり全てにおいて完璧に仕上げなくてはいけません。少しの欠けや焦げも許されません」

 
 王太子妃様がこんなものを口にしている。なんて思われたらそれこそ王太子妃様に迷惑がかかる。作るにあたり一割、時には二割出る規格外商品は捨てる事はしない。
 
 勿体無いしお金をゴミ箱に捨てるようなもの。だからアウトレットがある。
 味は変わらないし、少し焦げても香ばしいとさえ思う。


「アウトレットとはとても良い考えだね。勿体無いを減らせる。これから増えるだろうね」


「ふふっ。エミリオ様は本当に褒め上手ですね。褒めても何も出ませんよ」

「そうか……それは残念だ。またあのプリンが食べたかったのに」

 肩をすくめておどけるような仕草のエミリオ様。気さくな人だわ。


「ここだよ。駅からほど近くに車両を休ませておく場所がある」

 大きな建物……レンガで作られていて、王都の景色に馴染んでいる。



「わぁ……すごい」





 そんなことしか口に出なかった。圧巻……



「中に入ってみる?」
「良いんですか!」
「特別だよ」


 大きなドアはスライド式なのね。いろいろと説明を受けたけれど半分は頭に入ってこなかった。エミリオ様とは住む世界が違うんだわ……こんな凄い人に私の経営学を聞かせてしまったことを恥ずかしく思った。


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