離縁の理由は愛されたいと思ったからです
 旅立つ日が来た。お兄様に店の経営を任せてあるから長くは旅ができないけれど、隣国までは約束通り送ってくれるそうで、人生初の外国となる。

 お兄様は既に隣国で汽車に乗ったことがあるようでスマートだけど、私はドキドキしていた。馬車とは違って速度も速い。揺れは少しあるけれど、心地の良い揺れだった。


 この橋を作るのにどれくらいの時間と費用が掛かったのだろうか……このトンネルを掘るには……などとお兄様に聞くと、鉄道とは大イベントなんだ! 大きな金が動いていた。それによって鉄は大幅に値上がりした。その分儲けたけどな。なんて笑っていた。

 お兄様は私が思っているよりお金持ちだと思った。

 
 車窓から見る景色も美しい。天候に恵まれたわね。スージーも嬉しそう。


 学園にはちょうど新学期に重なる時期で、テストは免除。というのも家庭教師が付いていて勉強をしていたから、学園に入る学力が証明されていれば許可されるのだそう。

 学園の寮は家具が備え付けだから、身の回りのものを持っていくくらいにした。一年間過ごせれば良いものね。足りないものがあればその都度購入しよう。

 長閑な景色を見ていても飽きない。そろそろお昼という頃に一旦駅に停車した。三十分ほど停車予定で、貨物が降ろされていた。しばらくして護衛の一人が包みを抱えてやってきた。

 中身はお弁当で汽車の予約をした際にお弁当も用意していたんですって! 汽車の中で食事をするなんて不思議な感覚だわ。


 これから駅も増えるみたいだから、移動手段として便利になるし、貨物を運ぶのにも便利。駅をどこに作るかという候補で大分揉めたみたい。我がベルモンド伯爵領は掠っているくらいだから隣の侯爵領に停車する予定なんですって。それでも馬車を使えば早いわよね!


< 131 / 180 >

この作品をシェア

pagetop