離縁の理由は愛されたいと思ったからです
初夜には間違いないけれど
(ジョゼフ視点)
「ルーナ話がある」
「明日にしてくださいませ」
「いや、今話しておきたい事がある」
「どうぞ」
「……二人でゆっくり話し合いたい」
「サロンの準備を頼みましょう」
「夫婦の寝室があるだろう。そこで話し合おう」
「遠慮いたします。わたくし疲れましたので先に休ませてもらいますわ」
そう言って自室に戻ろうとするルーナの手を掴んだ。
「悪かった……私が全面的に悪い! 今まで本当に申し訳ない事をした」
使用人が目を大きく開きささっとその場を去っていく。結婚式を終えたばかりの夫が妻に平謝りしている。何かあったと普通は思うだろう。
「例の事でしたら気にしていませんわ。それより手を離してください。痛いです」
顔を顰めるルーナは痛そうな表情をしていた。つい力が入ってしまった。細い白い腕だ……捻ったら折れてしまいそうなくらい細い。
「……すまない」
「お話はそれだけですか? わたくしは先ほども言った様に疲れています」
パッと手を離すと掴まれていた腕をさすりながらそう言った。
「……明日アグネスが、引っ越してくる予定だ」
「分かりましたわ。それは聞いていた事ですので理解しております。もちろん虐めなど卑劣な事は致しませんからご安心を……それでは失礼します」
……あっ、行ってしまった。振り向きもしない。
今日はルーナとの初夜。念の為湯浴みをし夫婦の寝室へと行ったが、朝までルーナが来る事はなかった。冷たいままの寝具を見て後悔した。
来るわけ……ないか。