離縁の理由は愛されたいと思ったからです
「取引先のグロリア侯爵と商会長と会談で、グレムの街に行きました。そう伝えてありますよね?」


 不思議そうな顔をするエミリオ。


「そうですか。分かりました。夕食の前に着替えていらした方がよろしいかと?」


「あ、あぁ。そうします……ルー? 怒っていますか?」


 これ、本当に気がついてないのかしら? 鈍感なの?



「それでは用意が出来ましたら食堂で」


 くるりと背を向けて食堂に向かうルーナ。


「……え?」


 ポツンと置いてけぼりのエミリオ。いつもルーナはエミリオの上着を脱がせてあげていた。疲れたとネクタイを緩めるエミリオを見るのが好きだった。


 エミリオが不思議そうな顔のまま、言われた通り着替えようと自室に行き、ルーナに脱がせてもらえないと寂しさを感じながらも上着を脱いだ。ネクタイを外しシャツに手をかけた。その時


「な! なんだこれ!」


 鏡に映った己の姿を見て驚いた。 明らかに女性物と思われるキスマークが襟元にべったりと付いていた!

 なんでだ! なぜこんなものが付いている。頭をフル回転にして考えるが思い当たる節がない! 何せルーナ以外の女性に興味がないのだから。近づけさせる事もない。


 思い出せ思い出せ。部屋の中をうろうろと歩き回るエミリオ……



「あ!」


 会談が終わり、部屋を出て急いで邸に帰ろうとしていた。馬車に乗ろうと思い馬車に向かった時、黒髪の女性がマンホールの穴にヒールがはまったようで私にぶつかってきたんだ! それだ! それしかない。



 すぐさま食堂へと向かいルーナを呼ぶ。


「ルー、これはですね、」

 ジロリと睨まれるエミリオ。


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