離縁の理由は愛されたいと思ったからです
 昨日は女の子ばっかりだった店内もカップルや男一人でも来ているようだ。男が昨日のスタッフに声を掛けていた。どんな男にも笑顔で接客しているのか……ってそりゃそうだ。何を考えている。名前も知らない子なのに。


 今日も私の顔を見ていらっしゃいませと声を掛ける。
 昨日の菓子が美味かったと伝えたら、俺が食べていたことに驚いていた。ふむ。恋人か家族へのプレゼントだと思ったらしい。そんな存在はいないと伝えたら、失礼致しました。と謝る女の子。仕草と言うか全ての動きが洗練されている。失礼だが庶民街のスタッフとは思えなかったのでここで働いているのかなんてつい聞いてしまった……これではナンパじゃないか!



 それでもこの子の事をもっと知りたい。などと考えてしまった。

……いかんな。


帰り際に他のスタッフからルーナと呼ばれていた。プラチナブロンドのルーナと言う女の子。

 ……また買いに行こう。


「あの子めっちゃ可愛いよな!」
「彼氏いるのかな?」
「デートに誘ってみるか!」

 そう言う男達の視線の先はルーナだった。まぁ、そうだよな。



「エミリオ様、明日は一度国に帰りますよ。また買いに来れば良いじゃないですか。そんなにこのお店が気に入ったんですか?」

 側近のリュウに言われ名残惜しそうに見えたんだ。と少し恥ずかしくなる。


「あぁ、ここの菓子はうまい」

「お菓子だけですか? そんなに気になるならあの子の事調べますか?」

ルーナをちらりと見るリュウ。

 調べてどうするんだ……彼女のことを知りたいと思えば自分から声を掛けて聞かなきゃフェアではない。

< 66 / 180 >

この作品をシェア

pagetop