離縁の理由は愛されたいと思ったからです
 嬉しそうに微笑むルーナ……可愛いだけではなく美しいと思った。思っているより年齢が上とか? そんなことを思っていたら

「オー、ではなくルーナ様よろしいですか?」

 スタッフの男性に声を掛けられていた。なんだか込み入った話をしているようだ。

「すみません、私行きますね!」

 残念だと思った。せっかく話ができたのに。もうこんな偶然はないだろう。

「また、あのクッキーを買いに店に行くよ」

「お待ちしてますね! それでは失礼致します」

 頭を下げてスタッフの男性と行ってしまった。何者なんだろうな……ここのスタッフとも知り合いなのか? 


 店を出た後側近のリュウが買い物を済ませて来ていた。

「全く……自分で取りに行ってくださいよ。直す所があるかもしれないのに」

 ぶつぶつと文句を言うリュウ。

「この店の採寸はしっかりしているから大丈夫だ、いつも直す所がない」

 パーティーに招待されているので新調したタキシード。面倒だが国同士の交流を結んでいるのだから招待されたら出席しないわけにはいかない。

「そろそろエミリオ様も婚約者を、」

「お前もしつこいな……両親に言われているのか?」

「えぇ。耳にタコが出来るくらい言われていますよ。エミリオ様が気に入った女の子がいたら身分は問わないですって。あの子連れて行きますか?」

「……バカなことを言うな。勝手に連れて行けるわけないだろ」

「へぇ~あの子って言って想像するのはあのお菓子屋のスタッフの子ですよね。公爵様に報告しようかなぁ」

「しなくていい」


 

 リュウには余計な事はするなとキツく言った。


< 74 / 180 >

この作品をシェア

pagetop