離縁の理由は愛されたいと思ったからです
 にこっと笑うマッテオに苦笑いをするルーナ。

「いえ、お言葉はありがたいのですが、兄を待たせていますので、失礼しますわ」

 カーテシーをして去ろうとしたら、去り際に腕を掴まれた。


「僕と婚約しませんか? そうしたら貴女は侯爵夫人だ。それにジョゼフ兄さんにも復讐できるだろう?」

 い、痛い……

「やめてください」

 なんで衛兵がいないの? さっきまでいたのに!

「衛兵ならあちらで少しトラブルがあって駆り出されている。代わりのものが来るまで少し時間はかかるんじゃないかな?」

「きゃぁっ、」

 庭園へ連れ込まれてしまう……あっ、ヒールが。やだっ。

「やめて、離してっ、」

「大きな声を出したら人が来るよ? そうしたら無体な事をされたとまた噂になるんじゃないかな? 僕は責任を取るから大丈夫だけど」


 両腕を取られて顔が近づいてくる。

「やめて、だれかっ」

 必死でもがいていると大きな人影が見えた。

「たすけてくださいっ……」

 必死に声を出した。すると大きな影はマッテオを引き離し

「大丈夫ですか? お怪我はありませんか?」

 と声をかけてきた。

 聞いたことのある少しハスキーな声……月明かりで見えるその顔は……



「ルーナ? さん?」



 名前も知らないお客様だった。


 
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