転生アラサー腐女子はモブですから!?
「すぐにでも、アイシャとの婚約を発表したいのだが、ノア王太子とキースを納得させなくてはならない。少し待たせることになるが、必ずリンベル伯爵家へ挨拶へいく。それまで、私との婚約話をリンベル伯爵へ伝えないで欲しい」

「えっ? 伝えてはいけない……、それは、どういう事ですの? なぜ、両親にも伝えてはいけないのですか?」

「アイシャが思うほど、今回の婚約話は単純ではない。婚約者の決定権がリンベル伯爵家にあるとしても、残り二家が納得しなければ、婚約は成立しない。王家とナイトレイ侯爵家の承認がなければ、私達は結婚出来ないんだ。リンベル伯爵も、その事は承知しているはずだ」

「でも、二家に認めてもらうなんて、そんなこと出来ますの?」

「かなり難しいだろう。もし、リンベル伯爵に私との婚約を話してしまえば、家同士の話し合いが先行してしまう。そうなれば、アイシャを嫁がせたい二家は、ウェスト侯爵家への嫁入りを絶対に認めないだろう。どんな妨害を仕掛けてくるかわからない。王家とナイトレイ侯爵家に手を組まれたら、ウェスト侯爵家だけでは対抗出来ない」

 そんな契約が四家の間で交わされていたなんて、知らなかった。

 寝耳に水の話に、アイシャの心が不安でざわめく。今回の婚約話を、どこか他人事のように聞いていた過去の自分。リアムへの恋心を自覚する前であれば、それでよかったかもしれない。しかし、当事者であるにも関わらず、今回の婚約話の四家の契約のことでさえ、知らなかった事実が、アイシャの心に重くのしかかる。

 二家に認めてもらう手立てが、何も思い浮かばない。

「そんなぁ……、わたくし、どうすればいいの?」

「大丈夫だ、アイシャ。全く手立てがない訳ではない。個人となれば話は別だ。運良くノア王太子とキースは、個人的な付き合いが深くない。二人が手を組むことはないだろう。家を相手にするよりも、当事者であるノア王太子とキースに働きかけた方が上手く行く可能性は高い。彼らには、私から話をつける。今後、何が起ころうとも、私を信じて待っていて欲しい」

 何が起こると言うの……

 リアムの不穏な言葉が頭にこびりつき、嫌な胸騒ぎが心に巣喰う。

(リアムを信じて待つことしか出来ないの? 自分の幸せは、自ら掴み取りに行くのが、私よ!)

 アイシャはある決意を胸に、リアムとの最後のダンスを踊り続けた。


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