転生アラサー腐女子はモブですから!?
「――――ノア王太子殿下、リアム殿とグレイスが婚約すると言いましたか?」

「あぁ、そうだ。何か問題でもあるのか?」

 明らかに先程とは様子が違うセスを見て、己の考えが当たっていたことを悟る。

(やはり、色々と隠していたな)

「いいえ……、やはり貴方様は、噂通りの方のようですね。一筋縄ではいかない。お粗末な定例報告で騙し通せるお方ではなかった。改めて、お話しします。ランバン子爵家の次期当主として、ノア王太子殿下と正式に手を組みましょう」

「それは、現当主の命令で動くのではなく、王太子である私と直接手を組むと言う事か?」

「えぇ。そうです。これからは貴方様の指示で動くと言う事ですよ。もちろん今まで隠していた情報も教えましょう」

「その見返りとして何を求める?」

「全てが終わった時。グレイス嬢とドンファン伯爵の悪事が暴かれた時、ある人物を所望します。その者の人生を私にください」

「しかし、奴隷制度が廃止となっている現在、その者の意思を無視して人を所有する事は不可能だ。法に反くことになる」

「くくっ、いいえ大丈夫です。その者は重罪人ですから。死刑となるか、一生幽閉されるかの、世には出ない者ですから問題ないでしょう」

「そうか。して、その者の名は?」

 耳打ちされた名に驚愕する。

「わかった。全て終われば望みを叶えよう」

「では、契約成立ですね」

 目の前の男の異常さに背筋が凍る。

 執愛か……、いや、狂愛か……

 愛は人を狂わせる。

 アイシャへの想いが狂愛に変わる前に、自分の気持ちに決着をつけねばならない。

(いいや、もう遅い。狂愛か……)

 ノアの心の奥底に巣食う醜い感情は、リアムに対する確かな嫉妬心と――――

 己の心の内から吹き出しそうになる狂気をどうにか抑えこみ、ゆっくりと瞳を閉じた。



< 110 / 233 >

この作品をシェア

pagetop