転生アラサー腐女子はモブですから!?
伯爵令嬢、騎士になる?
(うへ、うへへ……、持つべきは強力な権力を持つお友達よねぇ~)
クレア王女泣き落とし大作戦が功を奏したのか、はたまたアイシャの不気味な迫力に負けたのか、引きつった顔のクレア王女から騎士団への見学の約束を取り付けたアイシャはご機嫌だった。
アイシャは自室のベッドの上で、今日のお茶会でのやり取りを思い出していた。
(妄想パラレルワールドにダイブしていたから記憶が曖昧だけど、王太子がキース・ナイトレイとか言ってなかったか? リアムとキースは幼なじみ。王城の廊下で見た青髪の子がキースだったのか?)
あの日の事が思い出される。
(リアムのあんな笑顔、初めて見た……)
誰に対してもニヒルな、どこか馬鹿にしたような笑みしか見せないリアムの違う一面を知って、アイシャの心がざわつく。青髪の彼に向ける笑みだけは違った。心の底から湧き出たような自然な笑顔だった。
リアムにとってキースは、誰よりも特別な存在なのだろうか。
あの日と同じように胸がモヤモヤするが、前世を含めても恋愛経験がないアイシャには理由がわからない。
(まぁ、私には関係ない事よ)
考えることを放棄したアイシャは、騎士団への熱い想いを胸に眠りについた。(ふっ、ふっ、ふっ、とうとう来たわよ、この日が。騎士団見学会♡)
王城へと向かう馬車の中、アイシャの不気味な笑いが響く。
数日前にクレア王女から届いた手紙を胸に今日まで眠れない夜を過ごした。ほとばしる妄想で、何度鼻血を噴きそうになったことか。途中、興奮のあまり鼻血を噴き出し、ベットが血まみれになったのはご愛嬌だ。
(夜中に叩き起こされるハメになった使用人の皆さま、本当に申し訳ありませんでした。アイシャは、本懐を遂げて参ります)
そんな事を回想しながら王城の門扉についたアイシャは、馬車から降りると、いつもの侍従と目を合わせニッコリと微笑む。それを見た侍従が満足気に頷き、背を向け歩き出す。
(すっご~い! とうとうアイコンタクトのみで意思が通じるようになったか)
三回目の訪問で侍従と変な信頼関係が築かれた事に、感動を覚える。
(ヨシヨシ、城の侍従にも私の存在は認められてきたようね。将来の就職先なら、味方は多いに限る!)
侍従に続き歩きながら、アイシャは将来の展望に思いを馳せていた。「アイシャ! ここよぉ~」
王城の一番裏手にある、だだっ広い広場の端に設えられたお茶の席、小さな丸テーブルにイスが二脚。そこに腰掛けたクレア王女が手を振っている。数名の侍女が紅茶を入れたり、日傘を差し掛けたりしているが……、アイシャは違和感に足を止めた。
(――――あれ? 今日は騎士団の見学をさせてもらえるはずだったんじゃ?)
遠くの方に建つ小屋の前に、数名の人影が小さく見えるが、だだっ広い広場を見回しても騎士団らしき格好をした者達は見当たらない。
「クレア様、今日は騎士団の見学をさせて下さるのではなかったのですか?」
「今、騎士団は遠征練習に行っていて居ないのよ。それに幼い令嬢に荒々しくて、むさ苦しい男達の練習風景を見せるのはちょっと……って、言われてしまったの」
(がぁぁぁぁん!!!!)
あまりのショックにその場に膝を着きそうになる。
(私は、私は……、荒々しくてむさ苦しい男達の練習風景を観たいのよぉぉぉぉ)
今にもエグエグと泣き出しそうな絶望を宿したアイシャの表情に、クレア王女の顔が引きつる。
「ア、アイシャ、代わりと言っては何だけど、子供達の練習なら見学させてくれるみたいよ。ほらっ! あそこ。出て来たわ!」
(子供達の練習風景!?)
クレア王女の言葉に、ガバッと振り返ったアイシャは広場をガン見する。
(――――うわっ! ちっさ!!)
遠くの方で剣らしき物を振り、練習を開始した子供達が見えるが、距離があり過ぎて顔すら判別出来ない。
「クレア様、もっと近くで見学をしてはダメでしょうか?」
「じゃ、邪魔をしなければ近くで観てもいいのではないかしら、ね」
アイシャの圧に気圧されたクレア王女が、若干引きながらも近くへ行く許可を出す。
駆け出したい気持ちを抑え、ゆっくりとゆっくりと少年たちへと近づいて行くアイシャは、数十メートル離れたところで立ち止まった。
(急に近づいて、逃げられても困るしね)
その場でジッと動かず、見学を開始したアイシャの存在に気づいた者達の困惑顔にさらされるが、無視だ。
目の前に広がるパラダイスと、脳内で繰り広げられる妄想の前には、全てが些末なことだ。イケメン揃いとはいかないが、前に立つ教官の指示の元、一糸乱れぬ動きで剣を振る動きは芸術的ですらある。
飛び散る汗、荒くなる息遣い、真剣な眼差し(妄想)
(はぁぁぁ、たまらん♡)
これが肉体美あふれる成人男性でないのが悔やまれる。アイシャはヨダレを垂らす勢いで少年達をガン見しながら、あらぬ企みを考えていた。
(どうしたら遠征練習に行っている騎士団本丸の練習風景を覗けるのだろうか? 幼い男児で、これだけ興奮するのだ。なんとしてでも、騎士団本丸を見てみたい! さて、どうしたものか?)
「――――これ、だわ!!」
しばらく見学をしながら、考えを練っていたアイシャに天啓が降りてきた。そして、その案を実行するため、練習が休憩に入ったところで教官に近づき尋ねる。「練習中のところ申し訳ありません。わたくしリンベル伯爵家のアイシャと申します。ひとつお伺いしてもよろしいでしょうか?」
目の前の精悍な顔立ちの教官が、爽やかな笑みを浮かべ、アイシャと目線を合わせるためしゃがむ。
「なんだい? 小さなお姫さま」
(うっひょお~、お、お姫さまって……、あぁ、笑顔が眩しい! この方、三十歳くらいかしら? こげ茶の短髪に、優しそうなタレ目、そしてバリトンボイス。タイプだわぁ♡)
しかも、子供の目線に合わせ、しゃがんでくれる優しさをあわせ持つイケメン。ド・ストライクのイケメンの登場にアイシャの脳内妄想もヒートアップする。
(いけない、いけない。今は、妄想をはかどらせている場合じゃないのよ、アイシャ!)
「あのぉ、今日は練習を見学させて頂き、感謝しております。それで、不躾な質問で申し訳ないのですが、女性が騎士団に入ることは出来ないのでしょうか?」
「はっ!? アイシャちゃんは騎士団に入りたいの?」
「はい。決して皆さまのお邪魔は致しません。練習場の片隅で、皆さまの練習を見ながら私も剣を習いとうございます」
アイシャの言葉を聞いた茶髪イケメンの雰囲気が冷たいものへと変わる。先ほどまでの優しい雰囲気は鳴りをひそめ、真剣な面持ちで諭される。
「剣は遊びで握るものではない! 貴族令嬢のお遊びに付き合う程、騎士団も暇ではないんでね」
背を向け、歩き出してしまった教官を慌てて追いかけ、彼の服の裾をつかむ。
「お待ち下さい! 決してお遊びなんかじゃございません!! と、とある事情がありまして剣を学びたいのです!」
アイシャの呼びかけに振り向いた教官へと、伝家の宝刀、涙目攻撃を仕掛ける。
(アイシャ、出来るだけ儚く見せるのよぉ)
「――――とある事情?」
「はい。でも、今はお話出来ません。しかし、どうしても自分の身は自分で守れる様になりたいのです」
「それは、またどうして……」
「……もう大切な人を失いたくない! お願いです。わたくしを騎士団へ入れて下さい」
最後に一粒涙をこぼし、うつむいたアイシャの目を覗き込むようにして教官がしゃがみ、アイシャの頭を優しく撫でる。
「複雑な事情がありそうだね。騎士団に女性が入れるかと言えば、入団は可能だ。実際に数名の女騎士が在籍している。でも、入団には、試験にパスしなければならない」
「入団試験?」
「あぁ、基礎的な剣の扱いが出来ることが大前提だ。もちろん、模擬試合も行われる。そこで実力を測り、認められれば入団となる。一度も剣を握ったことがなければ絶対に受からない。君は剣を握ったことはあるのか?」
「いいえ。でも、あきらめる事なんて出来ないのです!」
「では、親御さんに剣の師匠をつけてもらうことは?」
(万が一、お父さまにバレたら一生家から出してもらえなくなるわねぇ)
アイシャはブンブンと首を横に振る。
「まぁ、貴族令嬢が騎士団に入るとか言い出したら、自分が親でも必死で止めるわなぁ~」
思案顔の教官がアイシャの頭を優しくポンっとたたき、ニッと笑う。
「リンベル伯爵令嬢が、俺の前に現れたのも運命か……、よし! わかった!! 俺が稽古をつけてやるよ」
「えっ! よろしいのですか?」
思わず前を向いたアイシャの目に、困り顔で眉を下げた教官の優しい顔が飛び込んできた。
(――――キュン♡)
「あぁ。週に一回程度しか稽古出来ないが、基礎は教えてやれる。コイツらの練習が終わってからだが、いいか?」
「もちろんです! 教官ありがとうございます」
ガバッと頭を下げたアイシャに、教官の笑い声が響く。
「ははは、俺の名は『教官』じゃなくて、ルイス・マクレーンって言うんだ。騎士団の副団長をしている」
「えっ、えぇぇぇ!! 副団長さまですの!」
「はは、役職なんて、どうでもいいだろう。アイシャ、よろしくな!」
頭を撫でつつ、ニカッと笑う子供のような無邪気な笑顔に、キュン死にしそうになっていたアイシャは、またも予期せぬ大物を釣り上げたらしい。
(師匠ゲット!)
クレア王女泣き落とし大作戦が功を奏したのか、はたまたアイシャの不気味な迫力に負けたのか、引きつった顔のクレア王女から騎士団への見学の約束を取り付けたアイシャはご機嫌だった。
アイシャは自室のベッドの上で、今日のお茶会でのやり取りを思い出していた。
(妄想パラレルワールドにダイブしていたから記憶が曖昧だけど、王太子がキース・ナイトレイとか言ってなかったか? リアムとキースは幼なじみ。王城の廊下で見た青髪の子がキースだったのか?)
あの日の事が思い出される。
(リアムのあんな笑顔、初めて見た……)
誰に対してもニヒルな、どこか馬鹿にしたような笑みしか見せないリアムの違う一面を知って、アイシャの心がざわつく。青髪の彼に向ける笑みだけは違った。心の底から湧き出たような自然な笑顔だった。
リアムにとってキースは、誰よりも特別な存在なのだろうか。
あの日と同じように胸がモヤモヤするが、前世を含めても恋愛経験がないアイシャには理由がわからない。
(まぁ、私には関係ない事よ)
考えることを放棄したアイシャは、騎士団への熱い想いを胸に眠りについた。(ふっ、ふっ、ふっ、とうとう来たわよ、この日が。騎士団見学会♡)
王城へと向かう馬車の中、アイシャの不気味な笑いが響く。
数日前にクレア王女から届いた手紙を胸に今日まで眠れない夜を過ごした。ほとばしる妄想で、何度鼻血を噴きそうになったことか。途中、興奮のあまり鼻血を噴き出し、ベットが血まみれになったのはご愛嬌だ。
(夜中に叩き起こされるハメになった使用人の皆さま、本当に申し訳ありませんでした。アイシャは、本懐を遂げて参ります)
そんな事を回想しながら王城の門扉についたアイシャは、馬車から降りると、いつもの侍従と目を合わせニッコリと微笑む。それを見た侍従が満足気に頷き、背を向け歩き出す。
(すっご~い! とうとうアイコンタクトのみで意思が通じるようになったか)
三回目の訪問で侍従と変な信頼関係が築かれた事に、感動を覚える。
(ヨシヨシ、城の侍従にも私の存在は認められてきたようね。将来の就職先なら、味方は多いに限る!)
侍従に続き歩きながら、アイシャは将来の展望に思いを馳せていた。「アイシャ! ここよぉ~」
王城の一番裏手にある、だだっ広い広場の端に設えられたお茶の席、小さな丸テーブルにイスが二脚。そこに腰掛けたクレア王女が手を振っている。数名の侍女が紅茶を入れたり、日傘を差し掛けたりしているが……、アイシャは違和感に足を止めた。
(――――あれ? 今日は騎士団の見学をさせてもらえるはずだったんじゃ?)
遠くの方に建つ小屋の前に、数名の人影が小さく見えるが、だだっ広い広場を見回しても騎士団らしき格好をした者達は見当たらない。
「クレア様、今日は騎士団の見学をさせて下さるのではなかったのですか?」
「今、騎士団は遠征練習に行っていて居ないのよ。それに幼い令嬢に荒々しくて、むさ苦しい男達の練習風景を見せるのはちょっと……って、言われてしまったの」
(がぁぁぁぁん!!!!)
あまりのショックにその場に膝を着きそうになる。
(私は、私は……、荒々しくてむさ苦しい男達の練習風景を観たいのよぉぉぉぉ)
今にもエグエグと泣き出しそうな絶望を宿したアイシャの表情に、クレア王女の顔が引きつる。
「ア、アイシャ、代わりと言っては何だけど、子供達の練習なら見学させてくれるみたいよ。ほらっ! あそこ。出て来たわ!」
(子供達の練習風景!?)
クレア王女の言葉に、ガバッと振り返ったアイシャは広場をガン見する。
(――――うわっ! ちっさ!!)
遠くの方で剣らしき物を振り、練習を開始した子供達が見えるが、距離があり過ぎて顔すら判別出来ない。
「クレア様、もっと近くで見学をしてはダメでしょうか?」
「じゃ、邪魔をしなければ近くで観てもいいのではないかしら、ね」
アイシャの圧に気圧されたクレア王女が、若干引きながらも近くへ行く許可を出す。
駆け出したい気持ちを抑え、ゆっくりとゆっくりと少年たちへと近づいて行くアイシャは、数十メートル離れたところで立ち止まった。
(急に近づいて、逃げられても困るしね)
その場でジッと動かず、見学を開始したアイシャの存在に気づいた者達の困惑顔にさらされるが、無視だ。
目の前に広がるパラダイスと、脳内で繰り広げられる妄想の前には、全てが些末なことだ。イケメン揃いとはいかないが、前に立つ教官の指示の元、一糸乱れぬ動きで剣を振る動きは芸術的ですらある。
飛び散る汗、荒くなる息遣い、真剣な眼差し(妄想)
(はぁぁぁ、たまらん♡)
これが肉体美あふれる成人男性でないのが悔やまれる。アイシャはヨダレを垂らす勢いで少年達をガン見しながら、あらぬ企みを考えていた。
(どうしたら遠征練習に行っている騎士団本丸の練習風景を覗けるのだろうか? 幼い男児で、これだけ興奮するのだ。なんとしてでも、騎士団本丸を見てみたい! さて、どうしたものか?)
「――――これ、だわ!!」
しばらく見学をしながら、考えを練っていたアイシャに天啓が降りてきた。そして、その案を実行するため、練習が休憩に入ったところで教官に近づき尋ねる。「練習中のところ申し訳ありません。わたくしリンベル伯爵家のアイシャと申します。ひとつお伺いしてもよろしいでしょうか?」
目の前の精悍な顔立ちの教官が、爽やかな笑みを浮かべ、アイシャと目線を合わせるためしゃがむ。
「なんだい? 小さなお姫さま」
(うっひょお~、お、お姫さまって……、あぁ、笑顔が眩しい! この方、三十歳くらいかしら? こげ茶の短髪に、優しそうなタレ目、そしてバリトンボイス。タイプだわぁ♡)
しかも、子供の目線に合わせ、しゃがんでくれる優しさをあわせ持つイケメン。ド・ストライクのイケメンの登場にアイシャの脳内妄想もヒートアップする。
(いけない、いけない。今は、妄想をはかどらせている場合じゃないのよ、アイシャ!)
「あのぉ、今日は練習を見学させて頂き、感謝しております。それで、不躾な質問で申し訳ないのですが、女性が騎士団に入ることは出来ないのでしょうか?」
「はっ!? アイシャちゃんは騎士団に入りたいの?」
「はい。決して皆さまのお邪魔は致しません。練習場の片隅で、皆さまの練習を見ながら私も剣を習いとうございます」
アイシャの言葉を聞いた茶髪イケメンの雰囲気が冷たいものへと変わる。先ほどまでの優しい雰囲気は鳴りをひそめ、真剣な面持ちで諭される。
「剣は遊びで握るものではない! 貴族令嬢のお遊びに付き合う程、騎士団も暇ではないんでね」
背を向け、歩き出してしまった教官を慌てて追いかけ、彼の服の裾をつかむ。
「お待ち下さい! 決してお遊びなんかじゃございません!! と、とある事情がありまして剣を学びたいのです!」
アイシャの呼びかけに振り向いた教官へと、伝家の宝刀、涙目攻撃を仕掛ける。
(アイシャ、出来るだけ儚く見せるのよぉ)
「――――とある事情?」
「はい。でも、今はお話出来ません。しかし、どうしても自分の身は自分で守れる様になりたいのです」
「それは、またどうして……」
「……もう大切な人を失いたくない! お願いです。わたくしを騎士団へ入れて下さい」
最後に一粒涙をこぼし、うつむいたアイシャの目を覗き込むようにして教官がしゃがみ、アイシャの頭を優しく撫でる。
「複雑な事情がありそうだね。騎士団に女性が入れるかと言えば、入団は可能だ。実際に数名の女騎士が在籍している。でも、入団には、試験にパスしなければならない」
「入団試験?」
「あぁ、基礎的な剣の扱いが出来ることが大前提だ。もちろん、模擬試合も行われる。そこで実力を測り、認められれば入団となる。一度も剣を握ったことがなければ絶対に受からない。君は剣を握ったことはあるのか?」
「いいえ。でも、あきらめる事なんて出来ないのです!」
「では、親御さんに剣の師匠をつけてもらうことは?」
(万が一、お父さまにバレたら一生家から出してもらえなくなるわねぇ)
アイシャはブンブンと首を横に振る。
「まぁ、貴族令嬢が騎士団に入るとか言い出したら、自分が親でも必死で止めるわなぁ~」
思案顔の教官がアイシャの頭を優しくポンっとたたき、ニッと笑う。
「リンベル伯爵令嬢が、俺の前に現れたのも運命か……、よし! わかった!! 俺が稽古をつけてやるよ」
「えっ! よろしいのですか?」
思わず前を向いたアイシャの目に、困り顔で眉を下げた教官の優しい顔が飛び込んできた。
(――――キュン♡)
「あぁ。週に一回程度しか稽古出来ないが、基礎は教えてやれる。コイツらの練習が終わってからだが、いいか?」
「もちろんです! 教官ありがとうございます」
ガバッと頭を下げたアイシャに、教官の笑い声が響く。
「ははは、俺の名は『教官』じゃなくて、ルイス・マクレーンって言うんだ。騎士団の副団長をしている」
「えっ、えぇぇぇ!! 副団長さまですの!」
「はは、役職なんて、どうでもいいだろう。アイシャ、よろしくな!」
頭を撫でつつ、ニカッと笑う子供のような無邪気な笑顔に、キュン死にしそうになっていたアイシャは、またも予期せぬ大物を釣り上げたらしい。
(師匠ゲット!)