転生アラサー腐女子はモブですから!?
予想外の襲来
アイシャはリンベル伯爵家へと迎えに来たナイトレイ侯爵家の馬車に乗り、キースの暮らす王都にある侯爵邸へと向かっていた。
王都の中心部から少し離れた丘の上にあるナイトレイ侯爵邸は、王都にあるのが信じられないほどの広大な敷地を有している。
馬車がナイトレイ侯爵邸の門扉から入り、どれくらいの時間が経ったのだろうか。綺麗に整備された木々の間を抜け進む馬車は、未だに邸宅に到着していない。王都に広大な敷地を有しているナイトレイ侯爵家は、アイシャが想像する以上に、高い地位にいるのだろう。王直属の側近でもある騎士団長を家長とするだけのことはある。
(やっぱり、早く婚約解消してもらった方が、ナイトレイ侯爵家にとっても良いわよね)
車窓から、木漏れ日注ぐ木々を眺めながら、そんなことを考えていたアイシャに声がかかる。
「アイシャ様、まもなく、エントランスに着きますので、ご準備を」
馬車がゆっくりと停止し、外側から扉が開かれ御者の手を借り降りたアイシャは、思わぬ歓迎を受けることになった。
「まぁ! アイシャ様、お待ちしておりましたわぁ~」
(えっ……、誰?)
アイシャの目の前には、大勢の使用人を従え優雅に微笑む、大層美しい令嬢が立っていた。美しいストレートの青髪に、水色の瞳のご令嬢は、白く、美しい顔をほんのりと紅に染め、アイシャを見つめている。着ている花柄のデイドレスも相まって、微笑み佇む令嬢は、まるで精巧に作られた人形のように可憐で、美しかった。
(これは、キースの本命のご令嬢様の登場ではないの?)
キースの側をウロつく煩いハエ(アイシャ)を追い払いに来たというわけだ。
(それにしても、なんて可愛らしいご令嬢なの! ぜひ、お友達になりたいけど、無理よね……)
目の前に立つご令嬢の美しさに、見惚れていたアイシャの沈黙に耐えかねたのか、青髪の令嬢が口を開く。
「まぁ、アイシャ様、緊張なさっているの? どうしましょう? あっ! そういえば、まだ名乗っていませんでしたね。わたくし、マーサ・ナイトレイと申します。以後お見知りおきを」
花柄のデイドレスの裾を両手でつまみ、礼をする令嬢の美しい所作に見惚れながら考える。
――――マーサ・ナイトレイ………、ナイトレイ!?
「えっ!? キース様の姉君で、いらっしゃいますか?? ご挨拶が遅れて申し訳ありません。まさか、キース様の大切な姉君とは露知らず」
「えっ? 姉君? ぷっ――――っふふふ……」
目の前の可憐な令嬢が、目に涙を溜め、お腹を抱え笑っている。その姿を見つめ、アイシャの頭の中で疑問符がクルクルと回る。
(私、何か変なこと言ったかしら?)
「アイシャ様、ごめんなさいね。まさかキースの姉と間違えられるとは思っていなくて。わたくしは、姉ではなく、キースの母です」
「えっ……、えぇぇぇぇぇぇ!!!! お母さま!?」
あまりの衝撃に、よろめく。
目の前の女性は、どう見積もってもキースより二、三歳上くらいにしか見えない。仮にナイトレイ侯爵がロリコンだとしても、目の前のご婦人の若さは尋常ではない。
「アイシャ様、何か変な事を考えていますね? ちなみに夫とわたくしは同じ年でしてよ」
「え、え、え、……、嘘でしょ」
幼い頃に出会ったナイトレイ侯爵の顔を思い浮かべ、困惑する。
(あのクマみたいな侯爵と、同い年……、ありえない……)
「アイシャ様って面白い方ね。思っていることが、全て顔に出るんですもの。その分だと、社交界の噂はアテになりませんわね。キースに無理を言って、アイシャ様とお話をする機会を作ってもらって良かったわ。さぁ、行きましょう!」
放心状態のアイシャの腕を、満面の笑みを浮かべたマーサがつかむ。
(あぁ、マーサ様って意外と力が強いのね。さすが、武闘派ナイトレイ侯爵家の奥様だわ)
放心状態のアイシャは、ハンターに捕まった獲物の如く、がっちりとマーサに腕を組まれた状態で連行されることとなった。
王都の中心部から少し離れた丘の上にあるナイトレイ侯爵邸は、王都にあるのが信じられないほどの広大な敷地を有している。
馬車がナイトレイ侯爵邸の門扉から入り、どれくらいの時間が経ったのだろうか。綺麗に整備された木々の間を抜け進む馬車は、未だに邸宅に到着していない。王都に広大な敷地を有しているナイトレイ侯爵家は、アイシャが想像する以上に、高い地位にいるのだろう。王直属の側近でもある騎士団長を家長とするだけのことはある。
(やっぱり、早く婚約解消してもらった方が、ナイトレイ侯爵家にとっても良いわよね)
車窓から、木漏れ日注ぐ木々を眺めながら、そんなことを考えていたアイシャに声がかかる。
「アイシャ様、まもなく、エントランスに着きますので、ご準備を」
馬車がゆっくりと停止し、外側から扉が開かれ御者の手を借り降りたアイシャは、思わぬ歓迎を受けることになった。
「まぁ! アイシャ様、お待ちしておりましたわぁ~」
(えっ……、誰?)
アイシャの目の前には、大勢の使用人を従え優雅に微笑む、大層美しい令嬢が立っていた。美しいストレートの青髪に、水色の瞳のご令嬢は、白く、美しい顔をほんのりと紅に染め、アイシャを見つめている。着ている花柄のデイドレスも相まって、微笑み佇む令嬢は、まるで精巧に作られた人形のように可憐で、美しかった。
(これは、キースの本命のご令嬢様の登場ではないの?)
キースの側をウロつく煩いハエ(アイシャ)を追い払いに来たというわけだ。
(それにしても、なんて可愛らしいご令嬢なの! ぜひ、お友達になりたいけど、無理よね……)
目の前に立つご令嬢の美しさに、見惚れていたアイシャの沈黙に耐えかねたのか、青髪の令嬢が口を開く。
「まぁ、アイシャ様、緊張なさっているの? どうしましょう? あっ! そういえば、まだ名乗っていませんでしたね。わたくし、マーサ・ナイトレイと申します。以後お見知りおきを」
花柄のデイドレスの裾を両手でつまみ、礼をする令嬢の美しい所作に見惚れながら考える。
――――マーサ・ナイトレイ………、ナイトレイ!?
「えっ!? キース様の姉君で、いらっしゃいますか?? ご挨拶が遅れて申し訳ありません。まさか、キース様の大切な姉君とは露知らず」
「えっ? 姉君? ぷっ――――っふふふ……」
目の前の可憐な令嬢が、目に涙を溜め、お腹を抱え笑っている。その姿を見つめ、アイシャの頭の中で疑問符がクルクルと回る。
(私、何か変なこと言ったかしら?)
「アイシャ様、ごめんなさいね。まさかキースの姉と間違えられるとは思っていなくて。わたくしは、姉ではなく、キースの母です」
「えっ……、えぇぇぇぇぇぇ!!!! お母さま!?」
あまりの衝撃に、よろめく。
目の前の女性は、どう見積もってもキースより二、三歳上くらいにしか見えない。仮にナイトレイ侯爵がロリコンだとしても、目の前のご婦人の若さは尋常ではない。
「アイシャ様、何か変な事を考えていますね? ちなみに夫とわたくしは同じ年でしてよ」
「え、え、え、……、嘘でしょ」
幼い頃に出会ったナイトレイ侯爵の顔を思い浮かべ、困惑する。
(あのクマみたいな侯爵と、同い年……、ありえない……)
「アイシャ様って面白い方ね。思っていることが、全て顔に出るんですもの。その分だと、社交界の噂はアテになりませんわね。キースに無理を言って、アイシャ様とお話をする機会を作ってもらって良かったわ。さぁ、行きましょう!」
放心状態のアイシャの腕を、満面の笑みを浮かべたマーサがつかむ。
(あぁ、マーサ様って意外と力が強いのね。さすが、武闘派ナイトレイ侯爵家の奥様だわ)
放心状態のアイシャは、ハンターに捕まった獲物の如く、がっちりとマーサに腕を組まれた状態で連行されることとなった。