転生アラサー腐女子はモブですから!?
「わたくし、アイシャ様にお会い出来ることを、とても楽しみにしておりましたのよ~」
マーサにガッチリと腕を組まれ、豪華なエントランスを抜け連れてこられたのは、色とりどりの花々が咲き誇る庭園が見渡せるサンルームだった。開け放たれた窓からは芳しい花の香りが風にのり、鼻腔に届く。『いい香り〜』なんて、マーサから視線を外していなければ、平常心を保つことも出来ない。
目の前では、人形かと思うほど可愛らしいご婦人がニッコニコ顔でこちらを見つめている。胸の前で手を組み、顔をコテンと傾けて微笑むマーサの姿は、拝みたくなるほど可愛らしく、変な意味で胸がドキドキしてくる。
(私、歓迎されているのよね?)
あまりに友好的なマーサの態度に、『裏があるのでは?』と、疑心暗鬼になる心に、気持ちも沈む。リアムに裏切られてからというもの、好意を素直に受け取ることが出来ず、自己嫌悪に陥ってしまう。
「アイシャ様、緊張なさらないで。わたくし、アイシャ様にお会いして、お礼を言いたかったのです。ずっと――――」
「お礼ですか? わたくしは、何も……」
「いいえ、アイシャ様には感謝してもしきれないの。でも、その前に謝らせて。うちのバカ息子の幼少期からの行い、母として、わたくしが至らなかったばかりに、アイシャ様の身体も心も傷つけてしまい、本当にごめんなさい」
その場に立ち上がり、深々と頭を下げるマーサに、慌ててアイシャも立ち上がる。高位貴族の、しかも侯爵夫人に頭を下げさせるなんて、とんでもないことだ。なんとか頭を上げてもらおうと、手を伸ばすが、彼女は頭を下げ続け、言葉を紡ぐ。
「バカ息子が、か弱い女性に剣を容赦なく打ちつけていたと聞いた時は、あまりの事に卒倒してしまいましたの。それなのに貴方様は、そんなキースを許し、助言まで授けてくださった。アイシャ様のおかげで、夫と息子の長年のワダカマリも解け、今では良好な関係を築いております。全てアイシャ様のおかげなのです」
目の前の可憐なご婦人が、目に涙をいっぱい溜めて、微笑む。その様があまりに美しくて、アイシャは言葉を失う。言葉を発しないアイシャに、マーサはさらに畳みかける。
「わたくし、アイシャ様の婚約者候補にキースが名乗りを挙げたとき誓いましたの。必ずやナイトレイ侯爵家にアイシャ様をお迎えしようと。社交界で色々と囁かれている噂、あんなもの嘘八百だと分かっておりますわ。自身を害したキースをも許す、寛大で崇高な精神を持つアイシャ様が、男を誑かすアバズレなわけありませんもの!」
「お、お待ちください。身にあまる評価を頂き、嬉しい限りではありますが、社交界での噂の真偽は別として、私と関れば、ナイトレイ侯爵家の家名にも傷がついてしまいます。キース様のお名前にも」
「何を言いますか。ナイトレイ侯爵家の家名に傷がつく? そんなの屁の河童ですわ。ナイトレイ侯爵家の者は皆、アイシャ様の味方でございます。もちろん、キースは貴方様のことを誰よりも愛しく思っております。キースは、今まで色恋に全く興味がなく剣一筋でしたが、それもアイシャ様という女性が幼少期からいたからですわ。憎しみと愛は紙一重と言いますでしょ。あの子の長年の想い、受け取っては頂けないでしょうか?」
(こ、これは……、ナイトレイ侯爵夫人直々の、キースと婚約しろ攻撃かしら?)
マーサの圧に、アイシャの腰が引ける。予想外の熱烈歓迎ぶりに困惑し、どう断りを入れようかと悩んでいると、お茶会の席にキースが乱入して来た。
マーサにガッチリと腕を組まれ、豪華なエントランスを抜け連れてこられたのは、色とりどりの花々が咲き誇る庭園が見渡せるサンルームだった。開け放たれた窓からは芳しい花の香りが風にのり、鼻腔に届く。『いい香り〜』なんて、マーサから視線を外していなければ、平常心を保つことも出来ない。
目の前では、人形かと思うほど可愛らしいご婦人がニッコニコ顔でこちらを見つめている。胸の前で手を組み、顔をコテンと傾けて微笑むマーサの姿は、拝みたくなるほど可愛らしく、変な意味で胸がドキドキしてくる。
(私、歓迎されているのよね?)
あまりに友好的なマーサの態度に、『裏があるのでは?』と、疑心暗鬼になる心に、気持ちも沈む。リアムに裏切られてからというもの、好意を素直に受け取ることが出来ず、自己嫌悪に陥ってしまう。
「アイシャ様、緊張なさらないで。わたくし、アイシャ様にお会いして、お礼を言いたかったのです。ずっと――――」
「お礼ですか? わたくしは、何も……」
「いいえ、アイシャ様には感謝してもしきれないの。でも、その前に謝らせて。うちのバカ息子の幼少期からの行い、母として、わたくしが至らなかったばかりに、アイシャ様の身体も心も傷つけてしまい、本当にごめんなさい」
その場に立ち上がり、深々と頭を下げるマーサに、慌ててアイシャも立ち上がる。高位貴族の、しかも侯爵夫人に頭を下げさせるなんて、とんでもないことだ。なんとか頭を上げてもらおうと、手を伸ばすが、彼女は頭を下げ続け、言葉を紡ぐ。
「バカ息子が、か弱い女性に剣を容赦なく打ちつけていたと聞いた時は、あまりの事に卒倒してしまいましたの。それなのに貴方様は、そんなキースを許し、助言まで授けてくださった。アイシャ様のおかげで、夫と息子の長年のワダカマリも解け、今では良好な関係を築いております。全てアイシャ様のおかげなのです」
目の前の可憐なご婦人が、目に涙をいっぱい溜めて、微笑む。その様があまりに美しくて、アイシャは言葉を失う。言葉を発しないアイシャに、マーサはさらに畳みかける。
「わたくし、アイシャ様の婚約者候補にキースが名乗りを挙げたとき誓いましたの。必ずやナイトレイ侯爵家にアイシャ様をお迎えしようと。社交界で色々と囁かれている噂、あんなもの嘘八百だと分かっておりますわ。自身を害したキースをも許す、寛大で崇高な精神を持つアイシャ様が、男を誑かすアバズレなわけありませんもの!」
「お、お待ちください。身にあまる評価を頂き、嬉しい限りではありますが、社交界での噂の真偽は別として、私と関れば、ナイトレイ侯爵家の家名にも傷がついてしまいます。キース様のお名前にも」
「何を言いますか。ナイトレイ侯爵家の家名に傷がつく? そんなの屁の河童ですわ。ナイトレイ侯爵家の者は皆、アイシャ様の味方でございます。もちろん、キースは貴方様のことを誰よりも愛しく思っております。キースは、今まで色恋に全く興味がなく剣一筋でしたが、それもアイシャ様という女性が幼少期からいたからですわ。憎しみと愛は紙一重と言いますでしょ。あの子の長年の想い、受け取っては頂けないでしょうか?」
(こ、これは……、ナイトレイ侯爵夫人直々の、キースと婚約しろ攻撃かしら?)
マーサの圧に、アイシャの腰が引ける。予想外の熱烈歓迎ぶりに困惑し、どう断りを入れようかと悩んでいると、お茶会の席にキースが乱入して来た。