転生アラサー腐女子はモブですから!?
思わぬ提案
「母が済まなかった。アイシャを勝手に出迎えていたとは知らず。なにか失礼なことを言われなかったか?」
「いいえ。マーサ様は、とても歓待して下さいましたわ。まさか、こんなに歓迎してくださるとは思わず驚きました。社交界での私の噂を考えれば、会ってくださっただけでも、喜ばしいことです」
引き篭もっていた一ヶ月間、社交界に姿を見せなくなったアイシャの噂は、尾ひれがつき、ひどい言われようだ。今では男を誑かすアバズレと言われているらしい。三人の高貴な男性から求婚されたにも関わらず、他の男達を手玉に取り、隠れて遊んでいたと。それが、バレて、婚約破棄されたことになっている。
アイシャを良く知る友人達は、彼女がそんな事をする女性ではないと分かっていたが、誰が流したのか社交界でのアイシャは、アバズレ女としてレッテルが貼られてしまった。社交界の寵児三人から同時に求婚されたアイシャに対する嫉妬が絡んでいるのは明白ではあったが、人の不幸は蜜の味と、アイシャの婚約破棄騒動は、噂好きの貴族の格好のネタになっている。
「あの噂は、全くの嘘ではないか! ナイトレイ侯爵家の者達も、俺も、アイシャが素敵な女性である事は分かっている。しかし、あの噂をそのままにしておくのも口惜しい。アイシャはあの噂のせいで体調を崩し、伏せっていたのだろう?」
実際には、リアムに裏切られたショックで引き篭もっていたわけだが、そのことは言わず、曖昧に頷いておく。
「キース様、あんな噂など放って置けばいつかは忘れ去られます。社交界に出ず、ジッとして居れば良いだけのことですわ。不幸中の幸いと言いますか、わたくしあまり夜会やお茶会など社交の場に興味がありませんの。このまま、家で好きなことをして過ごすのは、苦ではありません。この機会にもう一度、剣の鍛錬を始めるのも良いかもしれません」
「しかし…………」
「キース様、評判が地に落ちたリンベル伯爵家は、捨て置いても良いのです。ですが、ナイトレイ侯爵家まで巻き込むわけには参りません。キース様、わたくしとの婚約話の取り下げをお願い致します。今なら傷口も直ぐに塞がるでしょう。膿みは、切り捨てるべきですわ」
「アイシャは俺に貴方を切り捨てろというのか? ノア王太子殿下やリアムと同じように」
キースの真剣な眼差しがアイシャを捉える。その眼差しがあまりに強く、アイシャの心がズキリと痛む。
「――――そうです。ナイトレイ侯爵家のためにも」
テーブルの上に置いていたアイシャの手にキースの手が優しく重ねられ、それに気づいたアイシャが、咄嗟に手を引こうとして、キュッと掴まれた。
「いいえ。マーサ様は、とても歓待して下さいましたわ。まさか、こんなに歓迎してくださるとは思わず驚きました。社交界での私の噂を考えれば、会ってくださっただけでも、喜ばしいことです」
引き篭もっていた一ヶ月間、社交界に姿を見せなくなったアイシャの噂は、尾ひれがつき、ひどい言われようだ。今では男を誑かすアバズレと言われているらしい。三人の高貴な男性から求婚されたにも関わらず、他の男達を手玉に取り、隠れて遊んでいたと。それが、バレて、婚約破棄されたことになっている。
アイシャを良く知る友人達は、彼女がそんな事をする女性ではないと分かっていたが、誰が流したのか社交界でのアイシャは、アバズレ女としてレッテルが貼られてしまった。社交界の寵児三人から同時に求婚されたアイシャに対する嫉妬が絡んでいるのは明白ではあったが、人の不幸は蜜の味と、アイシャの婚約破棄騒動は、噂好きの貴族の格好のネタになっている。
「あの噂は、全くの嘘ではないか! ナイトレイ侯爵家の者達も、俺も、アイシャが素敵な女性である事は分かっている。しかし、あの噂をそのままにしておくのも口惜しい。アイシャはあの噂のせいで体調を崩し、伏せっていたのだろう?」
実際には、リアムに裏切られたショックで引き篭もっていたわけだが、そのことは言わず、曖昧に頷いておく。
「キース様、あんな噂など放って置けばいつかは忘れ去られます。社交界に出ず、ジッとして居れば良いだけのことですわ。不幸中の幸いと言いますか、わたくしあまり夜会やお茶会など社交の場に興味がありませんの。このまま、家で好きなことをして過ごすのは、苦ではありません。この機会にもう一度、剣の鍛錬を始めるのも良いかもしれません」
「しかし…………」
「キース様、評判が地に落ちたリンベル伯爵家は、捨て置いても良いのです。ですが、ナイトレイ侯爵家まで巻き込むわけには参りません。キース様、わたくしとの婚約話の取り下げをお願い致します。今なら傷口も直ぐに塞がるでしょう。膿みは、切り捨てるべきですわ」
「アイシャは俺に貴方を切り捨てろというのか? ノア王太子殿下やリアムと同じように」
キースの真剣な眼差しがアイシャを捉える。その眼差しがあまりに強く、アイシャの心がズキリと痛む。
「――――そうです。ナイトレイ侯爵家のためにも」
テーブルの上に置いていたアイシャの手にキースの手が優しく重ねられ、それに気づいたアイシャが、咄嗟に手を引こうとして、キュッと掴まれた。