転生アラサー腐女子はモブですから!?
前世の記憶
「やっぱり、夜会には参加しないとダメかしら?」
鏡の前で丁寧にアイシャの髪を結っていた侍女の目が、みるみると吊り上がっていく。
「当たり前です。今夜はノア王太子殿下とリンゼン侯爵家のアナベル様の婚約披露のパーティーですよ。王族主宰の夜会である限り、貴族が出席するのは義務です」
「でも、両親さえ出席すればリンベル伯爵家としては義務を果たしているわ。わたくしが出席しなくても、なにも問題ないじゃない」
「何を仰っているのですか! アイシャ様はノア王太子殿下から直々に招待状を受け取っている身ですよ。それをすっぽかそうだなんて、有り得ません」
一年前に教育係兼侍女としてアイシャにつけられた侍女アマンダは、淑女とは程遠い行動を起こそうとするアイシャを強制的に連れ戻す役割りを担っている。始めは、専属侍女をつけられたことに反感を覚えていたアイシャだったが、何か問題を起こす度に親身になり、己を諭してくれるアマンダに、今では絶大な信頼を寄せている。
「アイシャ様のお気持ちもわかります。社交界で流れている噂を考えると、私だって貴方様を針のムシロの中に放り込みたくはありません。しかし、いつまでも逃げてばかりでは、本当に家から一歩も出られなくなってしまいます」
リアムに捨てられて以降、部屋に引きこもり、外との交流を絶ってしまったアイシャを側で励まし、支え続けてくれたアマンダの言葉は正しい。今を逃せば、アマンダの言う通り、社交界に戻るのは難しくなる。しかし、怖いものは、怖いのだ。胸を迫り上がってくる恐怖感を拭い去ることが出来ない。
それに、王族主催の夜会であれば、高位貴族の出席は義務だ。きっとリアムも出席する。別の女と腕を組み、自分の前に現れるリアムの姿が脳裏に浮かび、胸が嫌な音をたて軋む。
手が震え出し、それに気づいたアマンダが落ち着かせるように、アイシャの手を掴み、優しく撫でる。
鏡の前で丁寧にアイシャの髪を結っていた侍女の目が、みるみると吊り上がっていく。
「当たり前です。今夜はノア王太子殿下とリンゼン侯爵家のアナベル様の婚約披露のパーティーですよ。王族主宰の夜会である限り、貴族が出席するのは義務です」
「でも、両親さえ出席すればリンベル伯爵家としては義務を果たしているわ。わたくしが出席しなくても、なにも問題ないじゃない」
「何を仰っているのですか! アイシャ様はノア王太子殿下から直々に招待状を受け取っている身ですよ。それをすっぽかそうだなんて、有り得ません」
一年前に教育係兼侍女としてアイシャにつけられた侍女アマンダは、淑女とは程遠い行動を起こそうとするアイシャを強制的に連れ戻す役割りを担っている。始めは、専属侍女をつけられたことに反感を覚えていたアイシャだったが、何か問題を起こす度に親身になり、己を諭してくれるアマンダに、今では絶大な信頼を寄せている。
「アイシャ様のお気持ちもわかります。社交界で流れている噂を考えると、私だって貴方様を針のムシロの中に放り込みたくはありません。しかし、いつまでも逃げてばかりでは、本当に家から一歩も出られなくなってしまいます」
リアムに捨てられて以降、部屋に引きこもり、外との交流を絶ってしまったアイシャを側で励まし、支え続けてくれたアマンダの言葉は正しい。今を逃せば、アマンダの言う通り、社交界に戻るのは難しくなる。しかし、怖いものは、怖いのだ。胸を迫り上がってくる恐怖感を拭い去ることが出来ない。
それに、王族主催の夜会であれば、高位貴族の出席は義務だ。きっとリアムも出席する。別の女と腕を組み、自分の前に現れるリアムの姿が脳裏に浮かび、胸が嫌な音をたて軋む。
手が震え出し、それに気づいたアマンダが落ち着かせるように、アイシャの手を掴み、優しく撫でる。