転生アラサー腐女子はモブですから!?
「この度は、リンゼン侯爵家アナベル様とのご婚約、誠におめでとうございます」
壇上にいるノア王太子とアナベル様に向かいキースが口上をのべ、アイシャも彼にならい二人一緒に礼を取る。
「キースとアイシャ。今日は来てくれて嬉しいよ。アイシャには久しく会っていなかったね。元気だったかい?」
「えぇ。少し体調を崩しまして、家でゆっくり過ごしておりましたが、今は体調も戻り外出も出来るようになりました。ノア王太子殿下、アナベル様、ご婚約おめでとうございます」
心配そうにアイシャを見つめるアナベルに、心からの祝福を贈る。
(本当におめでとう、アナベル様)
長年の恋心が成就して本当に良かったと、心の中で祝福を贈ると、アナベルと目が合い、幸せそうな笑みを浮かべてくれる。最後に会った時よりも、更に美しく気品あふれる女性となったアナベルを見て思う。
美しく強い女性へとアナベルが変わったのは、ノア王太子に愛されているという絶対的自信からだろう。反対に、愛する人に裏切られた悲しみから弱い女へと変貌してしまうこともある。
恋の力は人を強くも、弱くもする。
(今の私には、アナベル様の笑顔はまぶしすぎる)
アナベルの幸せを一緒に喜べない自分の感情を自覚してしまい、アイシャの心が暗く澱んでいく。幸せそうに微笑み合う二人を見るのも辛くなってきた頃、キースに促され、その場を後にしたアイシャは、その足でバルコニーへと連れ出された。
キースに促され、バルコニーに備え付けのベンチへと座れば、心地よい風がアイシャの髪を揺らす。会場内の喧騒が嘘かのように、静かな時間が流れていく。
「アイシャ、大丈夫かい? やっぱりノア王太子殿下の幸せそうな姿を見ると辛くなってしまうかな?」
「えっ? ノア王太子殿下ですか??」
「あぁ。二人の幸せそうな姿を見て、一瞬辛そうな顔をしたからね。アイシャはノア王太子殿下のことが好きだったのかな?」
「えっ? キース様、誤解ですわ。わたくし、ノア王太子殿下のことは、これっぽっちも好きではありません。むしろ苦手と言いますか……、これでは殿下に対して不敬ですわね」
「では、なぜ辛そうにしていたの? アイシャが辛そうだと、俺も辛いんだ。話せば少し楽になることもあるよ。無理にとは言わないけど」
「美しく強い女性へと変わったアナベル様の姿を見て、恋は人を強くも弱くもするものだと実感しましたの。今の私にはアナベル様は眩し過ぎて、見ているのが辛かったのです」
「それは、アイシャが誰かに恋をしているからそう感じたの?」
誰かに恋をしているか……
リアムのことを思い出し、アイシャの胸がズキズキと痛み出す。
叶わない恋心。
リアムと過ごした日々が、走馬灯のように脳内を巡り、その思い出があまりにも眩しくて、涙があふれそうになる。こぼれ落ちそうになる涙を耐え笑みを浮かべると、隣に座ったキースに向き直り、言葉を紡ぐ。
「――――いいえ。そんな人、いませんわ」
「そう……、そんな相手忘れて仕舞えばいい」
横に座ったキースが、アイシャを抱き寄せる。
「今は、その男の身代わりでも構わない。俺といる事で、貴方の気持ちが少しでも楽になるなら、俺を身代わりにすればいい。ただ、いつかアイシャの気持ちが俺に向いてくれたら嬉しい。それまで、ずっと側にいるから。一人で抱え込まないで、俺に寄り掛かっていいんだ。アイシャの辛さを、俺にも分けて」
キースが宥めるように額へとキスを落とし、アイシャの瞳を見つめる。
キースは気づいているのだ。アイシャの心に居座る男の存在を。それでも、その男を忘れるために、キースを利用しろという。
(もう……、一人で泣かなくてもいい。キースに寄りかかってもいいんだ。リアムを忘れるために……)
ただただ、嬉しかった。キースの優しさが何よりも嬉しかった。
「最初の約束。俺とダンスを踊ってくれますか姫?」
アイシャの前に跪いたキースが、手を差し伸べる。その手に手を重ね立ち上がれば、力強い腕に腰を抱かれ、回り出す。
「ふふふ、姫だなんて、可笑しなキース様。喜んで、お相手しますわ」
壇上にいるノア王太子とアナベル様に向かいキースが口上をのべ、アイシャも彼にならい二人一緒に礼を取る。
「キースとアイシャ。今日は来てくれて嬉しいよ。アイシャには久しく会っていなかったね。元気だったかい?」
「えぇ。少し体調を崩しまして、家でゆっくり過ごしておりましたが、今は体調も戻り外出も出来るようになりました。ノア王太子殿下、アナベル様、ご婚約おめでとうございます」
心配そうにアイシャを見つめるアナベルに、心からの祝福を贈る。
(本当におめでとう、アナベル様)
長年の恋心が成就して本当に良かったと、心の中で祝福を贈ると、アナベルと目が合い、幸せそうな笑みを浮かべてくれる。最後に会った時よりも、更に美しく気品あふれる女性となったアナベルを見て思う。
美しく強い女性へとアナベルが変わったのは、ノア王太子に愛されているという絶対的自信からだろう。反対に、愛する人に裏切られた悲しみから弱い女へと変貌してしまうこともある。
恋の力は人を強くも、弱くもする。
(今の私には、アナベル様の笑顔はまぶしすぎる)
アナベルの幸せを一緒に喜べない自分の感情を自覚してしまい、アイシャの心が暗く澱んでいく。幸せそうに微笑み合う二人を見るのも辛くなってきた頃、キースに促され、その場を後にしたアイシャは、その足でバルコニーへと連れ出された。
キースに促され、バルコニーに備え付けのベンチへと座れば、心地よい風がアイシャの髪を揺らす。会場内の喧騒が嘘かのように、静かな時間が流れていく。
「アイシャ、大丈夫かい? やっぱりノア王太子殿下の幸せそうな姿を見ると辛くなってしまうかな?」
「えっ? ノア王太子殿下ですか??」
「あぁ。二人の幸せそうな姿を見て、一瞬辛そうな顔をしたからね。アイシャはノア王太子殿下のことが好きだったのかな?」
「えっ? キース様、誤解ですわ。わたくし、ノア王太子殿下のことは、これっぽっちも好きではありません。むしろ苦手と言いますか……、これでは殿下に対して不敬ですわね」
「では、なぜ辛そうにしていたの? アイシャが辛そうだと、俺も辛いんだ。話せば少し楽になることもあるよ。無理にとは言わないけど」
「美しく強い女性へと変わったアナベル様の姿を見て、恋は人を強くも弱くもするものだと実感しましたの。今の私にはアナベル様は眩し過ぎて、見ているのが辛かったのです」
「それは、アイシャが誰かに恋をしているからそう感じたの?」
誰かに恋をしているか……
リアムのことを思い出し、アイシャの胸がズキズキと痛み出す。
叶わない恋心。
リアムと過ごした日々が、走馬灯のように脳内を巡り、その思い出があまりにも眩しくて、涙があふれそうになる。こぼれ落ちそうになる涙を耐え笑みを浮かべると、隣に座ったキースに向き直り、言葉を紡ぐ。
「――――いいえ。そんな人、いませんわ」
「そう……、そんな相手忘れて仕舞えばいい」
横に座ったキースが、アイシャを抱き寄せる。
「今は、その男の身代わりでも構わない。俺といる事で、貴方の気持ちが少しでも楽になるなら、俺を身代わりにすればいい。ただ、いつかアイシャの気持ちが俺に向いてくれたら嬉しい。それまで、ずっと側にいるから。一人で抱え込まないで、俺に寄り掛かっていいんだ。アイシャの辛さを、俺にも分けて」
キースが宥めるように額へとキスを落とし、アイシャの瞳を見つめる。
キースは気づいているのだ。アイシャの心に居座る男の存在を。それでも、その男を忘れるために、キースを利用しろという。
(もう……、一人で泣かなくてもいい。キースに寄りかかってもいいんだ。リアムを忘れるために……)
ただただ、嬉しかった。キースの優しさが何よりも嬉しかった。
「最初の約束。俺とダンスを踊ってくれますか姫?」
アイシャの前に跪いたキースが、手を差し伸べる。その手に手を重ね立ち上がれば、力強い腕に腰を抱かれ、回り出す。
「ふふふ、姫だなんて、可笑しなキース様。喜んで、お相手しますわ」