転生アラサー腐女子はモブですから!?

高笑い【グレイス視点】

 あぁ~、何て気分が良いのかしら……

 ドンファン伯爵邸に帰ってきたグレイスは、高揚する気分そのままに、自室へと戻ってきた。アンティーク調のソファに腰掛け、王城で行われた夜会を思い出す。

 リアムにエスコートされ向けられる羨望の眼差し。社交界の寵児とも呼ばれる攻略対象者の一人、リアムとの婚約は、グレイスに様々な恩恵を与えた。ウェスト侯爵家のリアムとの婚約が、グレイスの白き魔女としての立場を確固たるものにした。

 今や、グレイスのことを疑う者はいない。誰しもが白き魔女だと自分を持てはやす。まさに乙女ゲームのヒロインそのままの展開に、グレイスの笑いは止まらない。

「あぁ、気分がいいわ。攻略対象者のリアムも私の手に落ちた」

 リアムと踊ったダンスを思い出し、笑みが深くなる。

 多くの令嬢から向けられる羨望の眼差しと、嫉妬の視線。あの場にいた多くの令嬢達から向けられる醜い嫉妬の視線を浴びながら踊るダンスは、最高に気分がよかった。

(私が乙女ゲームのヒロインなんだから、お姫さま扱いされて当然なのよ。あの女さえ、現れなければ、デビュタントの夜会で注目を浴びていたのは、私だったのよ!)

 デビュタントの夜会で攻略対象者達と次々と踊っていた女を思い出し、グレイスの怒りの炎が燃えあがる。

(私からヒロインの座を奪ったアイシャとか言う女が悪いのよ。モブですらない、名前も出てこない女の癖に、出しゃばるのがいけないのよ。これからは私がこの世界のヒロインとして君臨する!)

 今日の夜会は最高だった。リアムとの婚約を大勢の貴族から祝福され、白き魔女としての評判も上々だ。

 まさか誰もグレイスに『さきよみの力』がないとは、思っていない。

(そう……、私に『さきよみの力』はない)
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