転生アラサー腐女子はモブですから!?
 リアムとの婚約は、グレイスの白き魔女としての力を手に入れるためだけに、ウェスト侯爵家が打診したものだ。リアムからの高価なプレゼントや手紙は、婚約者としてご機嫌取りをしているにすぎない。会いに来ても、どこか距離を感じる。夜会でのエスコートや、伯爵家でお茶を共にしていれば分かる。あの男は決して自分に落ちないと。
 
 少し気がある振りをし、軽度なスキンシップを謀れば、どんな男だろうと簡単に自分に落ちる。その後は、思いのまま操れば良い。全てが自分の思い通りになる。しかし、リアムは違う。過度に身体を密着させようと、上目遣いで誘惑しようと簡単にかわされる。笑顔でやんわりと距離を取られ、それ以上近づくことを避けるように、人目がある場所へと連れ出される。

(私に落ちない男なんて……)

 ヒロインである私の魅力に落ちない攻略対象者がいるわけがない。リアムの態度は、グレイスのプライドをズタズタにした。

(その理由が、あの女だったとでも言うの!?)

 抱き合う二人のシーンが脳裏を巡り、グレイスの腹わたが煮えくりかえる。本来であればヒロインたる自分をリアムは愛すべきなのだ。それなのに、あの女にヒロインの座を奪われた。

 あの様子だとリアムとアイシャは愛し合っていた。

(あの女が私からリアムを奪う……、しかも、リアムが去った後に、キースに抱き上げられ連れ去られるって、どう言うことなのよ!! あのポジションはヒロインである私のものなのに!)
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