転生アラサー腐女子はモブですから!?
恥ずかしさから俯いていたアイシャの前に、小皿がスッと置かれる。そのお皿の上には、目にも鮮やかなクリームがのったカップケーキや、こんがりと焼けたスコーンやクッキーがのっていた。そして、芳しい香りがたちのぼる紅茶のカップが、小皿の隣には置かれていた。
「――――っあの! キース様。わたくしが、取り分けますので」
ひとり恥ずかしがっている間に、様々な菓子が取り分けられた小皿が目の前に置かれるという状況に、思わず笑ってしまう。相変わらずのキースの世話焼きぶりである。
「アイシャが楽しそうにしてくれると俺も嬉しい。俺がアイシャの世話をするのはおかしい?」
「いいえ。少し昔の事を思い出しまして。初めてナイトレイ侯爵家の領地でキース様と過ごした一週間を思い出していましたの。あの時も料理を取り分けたりとわたくしのお世話をしてくださったなぁ~って。本来なら女性がするべきことを何の躊躇いもなく、おやりになるから何だか新鮮で」
「あぁ。確かに普通は女性側がする行為なのかもしれないが、騎士団宿舎での生活が長かったからなぁ。あそこじゃ貴族階級関係なく、下っ端は上司の世話をするのが当たり前だった」
「そうで、ございましたか。確かに、騎士は平民、貴族関係ありませんね。実力がものをいう世界。男女関係なく、やれる者がやるというスタンスですわね」
「あぁ、相手のことを思い、出来る事をやるのは、男女関係なく大切なことだと思う。あの時は、アイシャはナイトレイ侯爵家領地に来たばかりで勝手が分からなかっただろうし、今は手を痛めている。俺が世話をするのは当然のことだ」
「でも、侍女や給仕もおりますわ。キース様の手を煩わせるのも気がひけます」
「そんな些末なこと、気にするな。それに、アイシャと二人きりになりたいから邪魔者はいない方がいい」
「――――なっ!?」
二人きりになりたいからだなんて、ストレート過ぎて対処に困る。
「キ、キース様! 本当にこちらのお部屋は素敵ですね。キャビネットに飾られたドールハウスも可愛らしくって、風景画も淡い色彩で描かれ素敵です。花瓶に生けられたお花も、目に鮮やかで、見ているだけで心が華やぎますわねぇ」
甘い雰囲気をぶち壊すべく無理矢理話を方向転換したアイシャを見つめ、キースがクスクスと笑う。
(笑われようが知ったことではない! 今の甘い雰囲気が続く方が困る)
「……そう。母が聞いたらきっと喜ぶよ。あの人、気合いを入れて、この部屋を準備していたから」
「えっ?? 最近、このお部屋は出来たのですか? 女性用の客間では?」
「違うよ。この部屋は、夫婦のプライベート空間――って言っても、俺と妻になる人のね」
「はっ!? それって……」
「アイシャが寝ていた部屋が、妻の寝室。あちらの扉が、夫である俺の寝室。そして、この部屋は夫婦のプライベート空間と言う訳さ」
キースの指し示した扉を見つめ、唖然とする。
(ヤバイかも……)
アイシャは自身の寝室の扉と、キースが示したもう一つの扉を交互に見つめ、冷や汗が背中を流れるのを感じていた。
「――――っあの! キース様。わたくしが、取り分けますので」
ひとり恥ずかしがっている間に、様々な菓子が取り分けられた小皿が目の前に置かれるという状況に、思わず笑ってしまう。相変わらずのキースの世話焼きぶりである。
「アイシャが楽しそうにしてくれると俺も嬉しい。俺がアイシャの世話をするのはおかしい?」
「いいえ。少し昔の事を思い出しまして。初めてナイトレイ侯爵家の領地でキース様と過ごした一週間を思い出していましたの。あの時も料理を取り分けたりとわたくしのお世話をしてくださったなぁ~って。本来なら女性がするべきことを何の躊躇いもなく、おやりになるから何だか新鮮で」
「あぁ。確かに普通は女性側がする行為なのかもしれないが、騎士団宿舎での生活が長かったからなぁ。あそこじゃ貴族階級関係なく、下っ端は上司の世話をするのが当たり前だった」
「そうで、ございましたか。確かに、騎士は平民、貴族関係ありませんね。実力がものをいう世界。男女関係なく、やれる者がやるというスタンスですわね」
「あぁ、相手のことを思い、出来る事をやるのは、男女関係なく大切なことだと思う。あの時は、アイシャはナイトレイ侯爵家領地に来たばかりで勝手が分からなかっただろうし、今は手を痛めている。俺が世話をするのは当然のことだ」
「でも、侍女や給仕もおりますわ。キース様の手を煩わせるのも気がひけます」
「そんな些末なこと、気にするな。それに、アイシャと二人きりになりたいから邪魔者はいない方がいい」
「――――なっ!?」
二人きりになりたいからだなんて、ストレート過ぎて対処に困る。
「キ、キース様! 本当にこちらのお部屋は素敵ですね。キャビネットに飾られたドールハウスも可愛らしくって、風景画も淡い色彩で描かれ素敵です。花瓶に生けられたお花も、目に鮮やかで、見ているだけで心が華やぎますわねぇ」
甘い雰囲気をぶち壊すべく無理矢理話を方向転換したアイシャを見つめ、キースがクスクスと笑う。
(笑われようが知ったことではない! 今の甘い雰囲気が続く方が困る)
「……そう。母が聞いたらきっと喜ぶよ。あの人、気合いを入れて、この部屋を準備していたから」
「えっ?? 最近、このお部屋は出来たのですか? 女性用の客間では?」
「違うよ。この部屋は、夫婦のプライベート空間――って言っても、俺と妻になる人のね」
「はっ!? それって……」
「アイシャが寝ていた部屋が、妻の寝室。あちらの扉が、夫である俺の寝室。そして、この部屋は夫婦のプライベート空間と言う訳さ」
キースの指し示した扉を見つめ、唖然とする。
(ヤバイかも……)
アイシャは自身の寝室の扉と、キースが示したもう一つの扉を交互に見つめ、冷や汗が背中を流れるのを感じていた。