転生アラサー腐女子はモブですから!?
 使者との面会は最悪の一言に尽きる。

 面会を終え執務室へと戻ってきたドンファン伯爵は、荒れた室内には目もくれず、お気に入りの椅子へと向かい、力尽きたかのように座り込む。

『グレイス・ドンファン伯爵令嬢の白き魔女としての真価を問う審問会を開く事となった。よって、義父であるドンファン伯爵、及びグレイス両名は王城で行われる審問会への出席を命じる』

 王家の紋章が押された命令書を手に持ち、ドンファン伯爵は深いため息をこぼす。

 白き魔女としての真価。

 あの女を養女にした事が、そもそもの間違いだった。あの田舎町で広がった噂話に飛びつき、グレイスを養女にしたのが、全ての元凶の始まり。あの女には、白き魔女としての力も、さきよみの力もない。グレイスを白き魔女に仕立てるために行って来た裏工作の証拠も、ウェスト侯爵家に握られている今、申し開きなど出来ない。

――――いいや、一つだけ手がある。

 白き魔女を(かた)り、ドンファン伯爵家の養女に納まったグレイスに、ドンファン伯爵家の実権を握られ、仕方なくグレイスの悪事に加担したと。彼女に無理矢理、裏工作をさせられていたと釈明すれば、情状酌量の余地はあると、みなされるかもしれない。

 今回の呼び出しも、グレイスの白き魔女としての真価を問うものだ。決して、ドンファン伯爵家の悪事についての審問ではない。ただ、グレイスの保護者として、呼び出されただけ。

(グレイスに全ての罪を着せて、あの女を生贄に、私は生き延びてやる)

 荒れ果てたドンファン伯爵の執務室からは、不気味な笑い声がいつまでも響いていた。
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