転生アラサー腐女子はモブですから!?
デビュタントを示す真っ白なドレスに身を包み、兄ダニエルにエスコートされたアイシャは、王城のエントランスで例の侍従と一年ぶりの再会を果たした。猛烈な勢いでアイシャへと駆け寄った侍従に、涙目で手を握られる。
「よ、よくご無事で……」
エグエグと泣き出した彼に若干ひいてしまったアイシャは、後ずさろうとして失敗した。がっちり握られた手が抜けない。
(離せぇぇぇ……)
思いが通じたのか、即座に状況を理解したダニエルの手刀がきまり、我に返った侍従がアイシャの困り顔にやっと気づいた。
「失礼致しました。夜会会場は階段を登った先にございます。楽しい夜をお過ごしくださいませ。デビュタントのお嬢さま」
アイシャは侍従に軽く会釈をすると、ダニエルに手をひかれ歩き出す。
「王城の使用人までたらし込むとは、困った妹だ」
兄ダニエルが意味不明な事を言っているが無視だ。
(侍従のあの態度、わたくし死んだと思われていたのかしらねぇ〜)
頻繁に王城を訪れていた令嬢が、突然いなくなれば心配もするだろうと、トンチンカンなことを考えていたアイシャは知らなかった。一年経った今でも侍従、侍女の間で、アイシャフィーバーは健在であることを。
見当違いなことを考えながらアイシャは、絢爛豪華な夜会会場へと続く階段を登る。すでに夜会会場では、大勢の紳士淑女が談笑しながら王族の登場を待っていた。
アイシャはダニエルと別れ、侍女に連れられデビュタントが集まる控えの間へと通された。
(皆さま、どこにいるのかしら?)
辺りを見回すと、すでに集まっていた数十名のデビュタントの中に友人を見つけた。
「イザベラ様、もう皆さまお集まりなのですね」
「アイシャ様、遅いですわ!! いつまで経ってもいらっしゃらないからハラハラしたわ」
「ははは、ちょっとトラブルがありまして……」
出発直前にダニエルがアイシャを見るなり鼻血を噴くという大惨事を起こしたのだ。多少距離があったお陰で白のドレスは無事だったが、兄の衣装替えと回復を待っていたら遅くなってしまった。
「どうせアイシャ様が寝坊でもしたのでしょう」
「違うわよ! お兄さまが……」
「えっ、ダニエルさま!?」
耳ざとくアイシャの言葉を聞き取った令嬢方に取り囲まれる。
(そうだった……、お兄さまって人気があったのよね。確か、社交界の寵児と言われているとかなんとか)
鼻血を噴いたりと情けない姿の兄しか見たことがないアイシャは、社交界の寵児と呼ばれている兄は嘘っぱちだと思っている。
「違うの、違うから。お兄さまの気分が悪くなって、遅れてしまったのよ」
「まぁ、それは心配ですわね」
「ありがとうございます。でも、ご心配には及びませんわ。今は、ピンピンしてますから」
「そう、それはよかったわ。ダニエルさまが参加されませんと、多くの令嬢が泣きますわ。愛好会が出来るほどですもの」
「愛好会?」
「えぇ、ノア王太子殿下を筆頭に、側近のリアムさま、キースさま、そしてダニエルさまは、社交界の寵児と呼ばれ、貴族令嬢の憧れの的ですもの。それぞれに愛好会ができているのよ」
突然話題にのぼった懐かしい名前に、トクンっと胸が高鳴る。
(リアム……)
脳裏によぎったリアムとのキスに、胸がズキッと痛む。ただ、その理由がわからない。
あの日から一年。毎日のように会っていたのが嘘だったかのように、リアムとの接触はなくなった。
(きっと、覚えていないわね)
子供の頃の付き合いは、大人になるにつれ変わっていく。侯爵家と伯爵家では家格の違いもある。幼なじみだからといって、大人になっても同じ付き合いができるわけではない。
そんなことは、アイシャだってわかっている。ただ、寂しいものは、寂しいのだ。
(この寂しさが、胸を痛ませるのね)
「よ、よくご無事で……」
エグエグと泣き出した彼に若干ひいてしまったアイシャは、後ずさろうとして失敗した。がっちり握られた手が抜けない。
(離せぇぇぇ……)
思いが通じたのか、即座に状況を理解したダニエルの手刀がきまり、我に返った侍従がアイシャの困り顔にやっと気づいた。
「失礼致しました。夜会会場は階段を登った先にございます。楽しい夜をお過ごしくださいませ。デビュタントのお嬢さま」
アイシャは侍従に軽く会釈をすると、ダニエルに手をひかれ歩き出す。
「王城の使用人までたらし込むとは、困った妹だ」
兄ダニエルが意味不明な事を言っているが無視だ。
(侍従のあの態度、わたくし死んだと思われていたのかしらねぇ〜)
頻繁に王城を訪れていた令嬢が、突然いなくなれば心配もするだろうと、トンチンカンなことを考えていたアイシャは知らなかった。一年経った今でも侍従、侍女の間で、アイシャフィーバーは健在であることを。
見当違いなことを考えながらアイシャは、絢爛豪華な夜会会場へと続く階段を登る。すでに夜会会場では、大勢の紳士淑女が談笑しながら王族の登場を待っていた。
アイシャはダニエルと別れ、侍女に連れられデビュタントが集まる控えの間へと通された。
(皆さま、どこにいるのかしら?)
辺りを見回すと、すでに集まっていた数十名のデビュタントの中に友人を見つけた。
「イザベラ様、もう皆さまお集まりなのですね」
「アイシャ様、遅いですわ!! いつまで経ってもいらっしゃらないからハラハラしたわ」
「ははは、ちょっとトラブルがありまして……」
出発直前にダニエルがアイシャを見るなり鼻血を噴くという大惨事を起こしたのだ。多少距離があったお陰で白のドレスは無事だったが、兄の衣装替えと回復を待っていたら遅くなってしまった。
「どうせアイシャ様が寝坊でもしたのでしょう」
「違うわよ! お兄さまが……」
「えっ、ダニエルさま!?」
耳ざとくアイシャの言葉を聞き取った令嬢方に取り囲まれる。
(そうだった……、お兄さまって人気があったのよね。確か、社交界の寵児と言われているとかなんとか)
鼻血を噴いたりと情けない姿の兄しか見たことがないアイシャは、社交界の寵児と呼ばれている兄は嘘っぱちだと思っている。
「違うの、違うから。お兄さまの気分が悪くなって、遅れてしまったのよ」
「まぁ、それは心配ですわね」
「ありがとうございます。でも、ご心配には及びませんわ。今は、ピンピンしてますから」
「そう、それはよかったわ。ダニエルさまが参加されませんと、多くの令嬢が泣きますわ。愛好会が出来るほどですもの」
「愛好会?」
「えぇ、ノア王太子殿下を筆頭に、側近のリアムさま、キースさま、そしてダニエルさまは、社交界の寵児と呼ばれ、貴族令嬢の憧れの的ですもの。それぞれに愛好会ができているのよ」
突然話題にのぼった懐かしい名前に、トクンっと胸が高鳴る。
(リアム……)
脳裏によぎったリアムとのキスに、胸がズキッと痛む。ただ、その理由がわからない。
あの日から一年。毎日のように会っていたのが嘘だったかのように、リアムとの接触はなくなった。
(きっと、覚えていないわね)
子供の頃の付き合いは、大人になるにつれ変わっていく。侯爵家と伯爵家では家格の違いもある。幼なじみだからといって、大人になっても同じ付き合いができるわけではない。
そんなことは、アイシャだってわかっている。ただ、寂しいものは、寂しいのだ。
(この寂しさが、胸を痛ませるのね)