転生アラサー腐女子はモブですから!?

今日は厄日なのか?

(まままま、まずいぃぃぃぃぃ!!)

 アイシャはノア王太子にクルクルと回されながら、この窮地を脱する手立てを探していた。

(あぁぁぁ、なぜ、あの時放心状態になったよ私……)

 無理にでも手を引っ込めて、逃げれば良かった。

 王太子と二回目のダンスを踊っている時点で手遅れ感は否めないが、ダンス終了と同時に逃げて夜会もスッポかせば、ボコボコにされるのだけは免れるかもしれない!

 ゆっくりと曲が終わりに近づく。

「流石にこれ以上、アイシャを独占するのは難しいね。離れがたいが仕方ない。今度は私の誘いを断らないでくれよ。でないと私も強行手段に出てしまうかもしれないよ」

 しっかりと釘をさすノア王太子の黒い笑みに背筋が凍る。

(ひぃぃぃぃぃぃ、黒過ぎるぅぅぅぅ)

「………あは、はは…ははは………」

 曲が終わり、ノア王太子の手からやっと解放されたアイシャは逃げ道を探し周囲を見まわす。

(これは正面突破しかないわね!)

 鬼気迫る勢いで歩き出したアイシャに恐れをなしたのか、正面の人垣が割れる。

(よっし! 抜けられる!!)

 割れた人垣を見て逃げられると思い、スピードを上げ歩き出したアイシャの手をつかみ引き寄せたアホがいた。

「ひぃっ!! えぇぇぇぇぇぇぇ」

 強い力で引き寄せられた反動で、後方へと倒れ込む。そして、気づいた時には手を引いたアホの腕の中に背中から抱き留められていた。

(えっ、えっ、えっ、今どういう状況? ちょっ、待って)

 抱き寄せるように腰へと回された腕を見て、アイシャの脳内はさらにパニック状態となる。
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