転生アラサー腐女子はモブですから!?
(やっと解放された……)
アイシャは、キースとの二曲目のダンスが終わると、挨拶もそこそこに逃げるように人混みへと紛れた。そして、どうにか、こうにか人混みを抜け壁際にたどり着いたアイシャは、疲れからその場にへたり込みそうになる。
(今日は、なんて日なの。早くお兄様を見つけて、この場から逃げた方がいいわね!)
ノア王太子とキースのせいで『壁の花』計画も台無しだ。キャッキャウフフの男同士の恋愛模様を美味しい料理を食べながら堪能しようと思ってたのに、これでは無理だ。
そんなことを、ざわめきが収まらない会場を眺めつつ考えていたアイシャに、鋭い声がかかる。
「ちょっと、そこのデビュタント!」
(はぁぁ、やっぱり来やがったよ……)
社交界の寵児と謳われるノア王太子とキースに取っ捕まった時点であきらめてはいたが、お決まりの展開にアイシャの唇から失笑がもれる。
「何かわたくしに、ご用でございますか?」
アイシャは顔に笑みを貼りつけ、ゆっくりと声のした方へと振り向く。するとそこには、ゴージャスな真っ赤なドレスに身を包み、こちらを睨む迫力美人を先頭に、数名の令嬢達が立っていた。
(はは…ははは……、まるで悪役令嬢に虐められるヒロインみたいな立ち位置ね。すっご~い)
疲労困憊のアイシャは壊れていた。
「貴方、デビュタントのくせに何なのよ! わたくしはノア王太子殿下の婚約者候補筆頭ですのよ! そのわたくしを差し置いて二度もダンスを踊るとは!! しかも、次期騎士団長とも言われている令嬢の憧れの御人キース様とも……」
(はぁ、不可抗力ですけども……、お怒りはごもっともですよね)
「なんて破廉恥な!! 淑女としての礼儀がなっていないわ!!!! 今後一切、ノア王太子殿下とキース様に近づかないと誓いなさい!」
アイシャは目の前の迫力美人に罵倒されながら、何故か感動していた。
(なんてバカ正直な令嬢なの)
こんなバカ正直に怒りをぶつけてくる令嬢も珍しい。普通は味方のふりをして蹴落とすか、裏でコソコソと嫌がらせをするのが貴族令嬢のお決まりだろうに、自身の怒りを包み隠さず、相手にぶつける様は、天晴れとしか言いようがない。
きっと目の前の迫力美人は嘘がつけないタイプだ。ぜひ、お友達になりたい。
(お友達になってくださいとか言ったら引かれるよなぁ。まずは基本に戻り自己紹介からね!)
「わたくし、リンベル伯爵家のアイシャと申します。大変失礼ですがお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
アイシャと対峙していた数名の令嬢達がザワつく。
「なっ!? 貴方がリンベル伯爵家のアイシャ様だったのですか?」
急に目に見えて狼狽し出した迫力美人を見て不思議に思う。
(リンベル伯爵家のアイシャだと何かあるのだろうか??)
アイシャは何も知らなかった。『リンベル伯爵家を敵にまわした貴族家は密かに葬られる』という、まことしやかに囁かれている社交界の噂を。
「えぇ、まぁ。リンベル伯爵家のアイシャです」
目の前の令嬢の顔色が、どんどんと悪くなる。
(大丈夫かしら?)
「アイシャ様とは露知らず失礼――――」
「――――そう、この娘がアイシャ・リンベル伯爵令嬢だよ、ご令嬢方。そして、私の婚約者さ」
「「えっ!? えぇぇぇぇ!!!!」」
見事な令嬢達の声の合奏に、アイシャの叫びは飲み込まれたのだった。
アイシャは、キースとの二曲目のダンスが終わると、挨拶もそこそこに逃げるように人混みへと紛れた。そして、どうにか、こうにか人混みを抜け壁際にたどり着いたアイシャは、疲れからその場にへたり込みそうになる。
(今日は、なんて日なの。早くお兄様を見つけて、この場から逃げた方がいいわね!)
ノア王太子とキースのせいで『壁の花』計画も台無しだ。キャッキャウフフの男同士の恋愛模様を美味しい料理を食べながら堪能しようと思ってたのに、これでは無理だ。
そんなことを、ざわめきが収まらない会場を眺めつつ考えていたアイシャに、鋭い声がかかる。
「ちょっと、そこのデビュタント!」
(はぁぁ、やっぱり来やがったよ……)
社交界の寵児と謳われるノア王太子とキースに取っ捕まった時点であきらめてはいたが、お決まりの展開にアイシャの唇から失笑がもれる。
「何かわたくしに、ご用でございますか?」
アイシャは顔に笑みを貼りつけ、ゆっくりと声のした方へと振り向く。するとそこには、ゴージャスな真っ赤なドレスに身を包み、こちらを睨む迫力美人を先頭に、数名の令嬢達が立っていた。
(はは…ははは……、まるで悪役令嬢に虐められるヒロインみたいな立ち位置ね。すっご~い)
疲労困憊のアイシャは壊れていた。
「貴方、デビュタントのくせに何なのよ! わたくしはノア王太子殿下の婚約者候補筆頭ですのよ! そのわたくしを差し置いて二度もダンスを踊るとは!! しかも、次期騎士団長とも言われている令嬢の憧れの御人キース様とも……」
(はぁ、不可抗力ですけども……、お怒りはごもっともですよね)
「なんて破廉恥な!! 淑女としての礼儀がなっていないわ!!!! 今後一切、ノア王太子殿下とキース様に近づかないと誓いなさい!」
アイシャは目の前の迫力美人に罵倒されながら、何故か感動していた。
(なんてバカ正直な令嬢なの)
こんなバカ正直に怒りをぶつけてくる令嬢も珍しい。普通は味方のふりをして蹴落とすか、裏でコソコソと嫌がらせをするのが貴族令嬢のお決まりだろうに、自身の怒りを包み隠さず、相手にぶつける様は、天晴れとしか言いようがない。
きっと目の前の迫力美人は嘘がつけないタイプだ。ぜひ、お友達になりたい。
(お友達になってくださいとか言ったら引かれるよなぁ。まずは基本に戻り自己紹介からね!)
「わたくし、リンベル伯爵家のアイシャと申します。大変失礼ですがお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
アイシャと対峙していた数名の令嬢達がザワつく。
「なっ!? 貴方がリンベル伯爵家のアイシャ様だったのですか?」
急に目に見えて狼狽し出した迫力美人を見て不思議に思う。
(リンベル伯爵家のアイシャだと何かあるのだろうか??)
アイシャは何も知らなかった。『リンベル伯爵家を敵にまわした貴族家は密かに葬られる』という、まことしやかに囁かれている社交界の噂を。
「えぇ、まぁ。リンベル伯爵家のアイシャです」
目の前の令嬢の顔色が、どんどんと悪くなる。
(大丈夫かしら?)
「アイシャ様とは露知らず失礼――――」
「――――そう、この娘がアイシャ・リンベル伯爵令嬢だよ、ご令嬢方。そして、私の婚約者さ」
「「えっ!? えぇぇぇぇ!!!!」」
見事な令嬢達の声の合奏に、アイシャの叫びは飲み込まれたのだった。